美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。
一人の男の野望から始まった! 世界最強の「私立」美術館
──ニューヨークはアートの街に成り上がったんですね。知りませんでした! で、その本拠地がメトロポリタン美術館ということですか?
そうですね! ここにはアメリカがヨーロッパを「追いつけ追い越せ」で収集した、世界中の数々の芸術作品や出土品などが展示されているんです。
──すごいな~! アメリカってなんといっても財力がありそうだから、きっと国の威信をかけて作った大美術館! って感じなんでしょうね!
…って思いますよね? でもね、実は全然違うんですよ。
──え、どういうことですか?
メトロポリタン美術館はまさかの「私立」美術館なんです。
──ええぇ~~!! この巨大なのが、私立!? そんなことってあります!?(汗)
はは(笑)。そもそもこの美術館を作ろうと動いた人も、一般の人なんですよ。
1866年の7月4日、パリにいたアメリカ人たちは「独立宣言」の署名90周年を記念してお祝いをしていました。その席でニューヨークの弁護士ジョン・ジェイが「今こそアメリカ国民のために美術の国立機関とギャラリーの基盤を築くとき!」とスピーチしたんです。
それによって計画がスタートし、4年後の1870年に鉄道会社の社長であったジョン・テイラーを代表としてメトロポリタン美術館は設立されました。
──会社の社長さんが代表になるくらいだからやっぱり私立なんだ…。でも「美術館がいる!」って言ってから4年で設立って、その間にどのくらいの作品を集めることができたんですか?
それが…。ゼロです!!
──ズコーッ! 作品ないのに美術館だけ作っちゃったんですか?
こういうのって勢いも大切でしょ?(笑)ただ設立した数か月後にはヨーロッパの絵画を174点も買い集めることができたようで、これがコレクションの基になっています。
ちなみにその資金は全て一般からの寄付だったようですよ。
──へ~。最初は寄付だったんですね。でも今ではこんなに大きな美術館が、まさかそんなスモールスタートだったと思うと面白いです。
ほんとですよね! こうやって始まった美術館が世界三大美術館にまで上り詰めるんですからね! 素晴らしい成り上がり物語ですよ。
──僕もなんでもできるような気がしてきました(笑)。
(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)