相手が話している内容は、明らかに間違っている、あるいはこちらの意向と合わない。しかし、真っ向から否定したら相手との関係性が悪くなる……交渉をしていてそんな状況になったことはありませんか?『「よい説明」には型がある。』の著者、犬塚壮志氏によれば、「自己主張の型」を使えば、相手を尊重しつつ、上手にこちらの意見を通すことができるといいます。真似するだけで使える、即効フレーズと併せて紹介します。(大学受験専門塾「ワークショップ」情報科講師/株式会社士教育代表取締役 犬塚壮志)
空気を悪くせずに反対意見を伝える
あなたが一生懸命に考えた自分の意見やアイデアを相手に伝えたとき、それに対して、次のような返答をされたらどう思うでしょうか。
「しかしですね、……」
「いや、でも、……」
「そうではなくって、……」
あまりいい気分はしないですよね。相手の意見が正論だったり、相手に悪気がなかったりしても、その意見を受け入れ難くなる感情が湧き起こるのが人間というものです。
ここで、この状況を逆の立場で考えてみてください。あなたが相手に反対意見や異なった意見をぶつけるときに、どう伝えると相手に拒絶され、どう伝えたらスムーズに受け入れてもらえるでしょうか。
今回は、あなた自身の意見や考えを相手にスムーズに伝えるための「自己主張の型」という自己主張するときに使える説明の型を紹介します。自己主張と聞くと、「ただ自分の意見をゴリゴリと主張する」と考える人がいるかもしれませんが、決してそうではありません。これは、コミュニケーションの手法の一つである「アサーション(自己主張)」に基づく型です。アサーションとは、相手の意見やその場の空気を尊重しつつも、対等な立場で自分の意見を相手にしっかりと伝えるコミュニケーションをいいます。
相手の意見が明らかに間違っていて、反対意見を出さなくてはいけない場合、違った角度からの意見を出して、より活発な議論にする必要がある場合など、さまざまなシチュエーションでこの型は使えます。
また、意見やアイデアを出してきた相手が自分よりも役職が上であったり、お客さんだったり、相手と自分の立場の違いを考えると、なかなか伝えにくい状況もあるでしょう。そうした際にもよく役立つ型です。相手を尊重する姿勢を意図的に説明で示すことで、相手との関係性の維持・発展が可能になり、さらに、相手の自尊心を高めることもできてしまうのです。