営業DXの落とし穴――
仕組み化なき営業DXは形骸化する

 営業DXの成功要件の一つは、営業やマーケティングの仕組み化です。

 多くの営業組織における営業部員の成果は、パレートの法則に従います。パレートの法則とはこの例でいうと「上位2割の営業部員の成果で、売上全体の8割を占める」とう経験則に基づく仮説になります。

 パレートの法則が当てはまる営業組織は、営業活動が属人的であり、一部の高成績者に売上を頼る傾向にあります。このような組織では8割の営業部員で2割の売上にしか貢献できていないため、平均的な生産性が低く、成果を上げられない8割の営業部員のモチベーションも低くなりがちです。

 属人化が進む営業組織で営業DXを導入すると、ITツールをうまく活用できる営業部員とそうでない部員の間で差が生じます。ITツールや営業DXの仕組みをうまく活用する営業部員は高成績を収める一方で、他の営業部員はうまく活用できず、売上に伸び悩む傾向にあります。

 パレートの法則で考えると、8割の営業部員がITツールをうまく活用できないことになります。大半の営業部員が営業DXで導入したITツールをうまく活用できないため、そのうち営業DXはほとんど利用されないこととなり、形骸化する可能性が高くなります。

 加えて、営業DXにより営業部員の間における成果の格差が拡大し、成績不振の部員の立場が悪くなるどの組織の不和が生じることになります。

 これは、営業活動が属人化している組織で営業DXを導入した際の問題点になります。営業活動を標準化や仕組み化している場合には、営業DXにより全体的に成果を底上げすることが可能です。

 しかしながら、営業活動の標準化や仕組み化には注意が必要です。

 営業活動の標準化や仕組み化では、トップセールスの営業活動や個々の行動を、自社の標準営業プロセスとして仕組み化することが一般的です。営業における仕組み化には落とし穴があるので注意が必要です。

 トップセールスの能力を自社の営業活動の標準プロセスとして定義し、他の営業部員にそのままコピーしようとしてもなかなかうまくいきません。トップセールスは、営業の優れたスキルを持っています。加えて、将来達成したい理想的な状態や目標、そして強いモチベーションを持って業務にあたっています。トップセールスのモチベーションを生み出す原動力は、個人の非常に複雑な要素から構成され、属人的です。これを自社の標準営業プロセスとして他の営業部員に再現することはほぼ不可能です。

 そのため、一般的な営業部員が活用可能なトップセールスの能力や仕組み、業務の流れを整理し、他の営業部員にも適用できる仕組みを構築することが重要になります。社内でうまく営業DXを活用できる基盤を整備し、誰でも一定の成果が得られるような仕組みを確立することが求められます。

これらの詳細は、私の著書『売上10億円の壁を突き破る! 営業DXの強化書』に記載されております。

 あなたの営業DXはこれにいずれかに該当しないでしょうか。心当たりがあるようであれば、いまからでも自社の営業DXを見直すべきです。