スポーツやビジネスの世界において、チャンスに成果を残す人材は「勝負強い人」として評価されることが多い。プロ野球でその“勝負強さ”を計る指標として真っ先に思いつくのは「得点圏打率」だろう。2021年シーズンにおいて、阪神の梅野隆太郎選手はシーズン打率2割2分5厘に対し、得点圏打率3割2分1厘を記録し、その年のテレビ中継でアナウンサーが毎度「勝負強い梅野」と称していたことを記憶している。
しかし、梅野選手の20年シーズン打率は2割6分2厘に対し、得点圏打率は1割9分7厘と大きく下回るなど、シーズンによって得点圏打率にばらつきが見られる。このことは、梅野選手に限らない。
それを証明するために、得点圏打率を「年度間相関」から見ていきたい。年度間相関とは、得点圏打率といった指標がシーズンや期間をまたいでも一貫性があるかを表す尺度だ。22年と23年シーズンどちらも規定打席数を上回った打者の得点圏打率の相関係数を求めると0.01で無相関で、得点圏打率が継続性のない指標だと分かる。
しかも、得点圏打率は単に得点圏に走者がいる場面での打率であるため、試合を決めるような重要な得点圏で打ったのか、そうでないのかは定かでない。そのため、真の勝負強さを示す指標としてはそぐわない。