野球における主要な打撃指標といえば「打率」「本塁打」「打点」のことだが、はたして打点という指標は、選手個々の得点創出能力を如実に反映しているといえるだろうか──。例えば、2023年のMLBにおいて、大谷翔平選手は打率3割4厘、本塁打44本、打点95だった。一方、大谷選手と同じアメリカンリーグのヒューストン・アストロズに所属するカイル・タッカーは打率2割8分4厘、本塁打29本と打率と本塁打は大谷選手より劣る成績であるにもかかわらず、打点は112と大谷選手より多い。
この理由は、大谷選手の前を打つ打者の出塁率が3割前後であるのに対し、タッカーの前を打つ打者の出塁率が4割近いことにある。つまり、大谷選手は塁上にいる走者が少ない状況で打つことが多いのに対し、タッカーの打席時には塁上に走者がいる状況が多いということだ。このように「打点」は個人の成績のみならず、チームの出塁力に依存する指標であることが分かる。
近年の野球において、出塁率と長打率の合計で表される「OPS」(On base Plus Slugging)という打撃指標は得点との相関が強く、算出も容易なため、日本でも知名度は上がってきた。OPSは1を超えると超一流の打者という評価になるが、23年の大谷選手のOPSは1.066でMLBトップの成績である。