2023年シーズンの大谷翔平選手は打者として打率3割4厘、本塁打44本で本塁打王を獲得。投手としても防御率3.14、10勝をマークし、21年に続き2度目のMLBアメリカンリーグのMVPを受賞した。MVPを選考する全米野球記者協会の会員30人全員が1位票を投じたのは驚嘆に値する。
メジャーリーグのMVP選考において、重視される指標がある。それはWAR(Wins Above Replacement)と呼ばれる指標で、「控えレベルの選手と比較して、そのチームに何勝分の貢献をしたか」を表す。大谷選手のWARは9.0であることから、「大谷がエンゼルスに9勝を上積みさせる活躍をした」という評価になる(図表)。WARの計算は、打者と投手で算出方法が異なるが、大谷選手は打者のWARだけでも他の候補選手よりも高い上、投手分のWARを加算すれば他を圧倒しており、客観的な評価からしても、MVPは妥当といえる。
WARは選手の市場価値を計る上でも重要であり、「1勝当たりに期待できる市場価値(収益)」にWARを乗じた金額が選手の適正年俸とされている。過去の例を挙げると、ロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウトがWAR9.5を記録し、18年オフに12年4億2,650万ドルで契約を結んだ。ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジはWAR11.6を記録した22年オフに、9年3億6,000万ドルでそれぞれ大型契約を結んでいる。マイク・トラウトとアーロン・ジャッジの年俸を足してWARで割ると、WAR1当たり年俸350万~370万ドル程度の価値があると考えられる。