さらにいえば、ステアリングとスロットルペダルの操作しだいでテールスライド状態を長引かせることも不可能ではない。つまり、限界コーナリング時のコントロール性が格段に向上したのである。
こうした特性を実現するうえで、電子制御式4WDやリアステアリングシステム、さらにはコーナリングの姿勢を制御する新世代のESC機構が貢献していることは間違いないだろう。
しかも、ドライビングモード切り替えで“レース”を選択すると、ブースト・モードが使用可能になる。これは、通常80%に抑えられたモーター出力を、一定時間内であれば100%にまで高める機構。サーキットでのラップタイムを短縮させるのに役立つ。同様の機能はF1マシンにも搭載されている。モータースポーツ・ファンにとってはたまらないシステムといえる。
サーキットでこれまでにない痛快な走りを披露してくれたC63S・Eパフォーマンスは、一般道でも進化が実感できる。従来モデルとは比べものにならないほど足回りの動きが柔軟になり、しなかやで快適な乗り心地を味わえるのだ。エンジン音にしても、ボリュームを抑えることで車内の静粛性は一段と向上していた。
エンジン音が静かになった新型を熱烈なAMGファンは残念に思われるかもしれない。だが、その音色は高音成分中心の精緻なもの。私にはむしろ魅力的に思えた。サーキットで一段とコントローラブルになり、一般道での洗練の度合いを大幅に高めた新世代AMGの誕生を、私は心から歓迎する。
(CAR and DRIVER編集部 報告/大谷達也 写真/Mercedes-AMG)