手持ちの金がなくなった当初は消費者金融から借金をしていたが、程なくして延滞続きとなり、ヤミ金に手を出し始める。気が付けば「自己破産を考えるほどの借金」に膨れ上がった。警察の取り調べによると「とにかく、金が欲しかった」ことが動機であった。

 このように、犯罪と借金苦には深い関係がある。2006年に新たな多重債務者を生まないという大義で貸金業法が改正されたが、ここに来てカウンセリングや金銭教育といった抜本的な解決法をおざなりにして施行された現行法の欠陥が、露呈してきたとも言える。

世間を震撼させた
「ルフィ」事件

 そしてこの報道の直後、同じく2023年2月に「ルフィ」が手引きした東京都狛江市の強盗殺人事件が発生した。この事件で実行犯の一人として逮捕された21歳(当時)の男は競艇好きで、1日で数十万円もの損失を繰り返すほどで、高金利のヤミ金を日常的に利用していた。ところが、事件の残忍性や容疑者本人のギャンブル癖に反して、職場などの知人はこの男を「人懐っこい」「無断欠勤せず仕事に真面目」と評していた。

 もちろん、借金に苦しむことが、そのまま犯罪につながるわけではない。しかし、借金が膨れ上がれば、人は崖っぷちに追い詰められる。そして、そんな人に対して、反社会性力であるヤミ金はしばしば、弱みにつけ込むかたちで闇バイトを斡旋するのだ。

 2023年6月に報道された事件では、ヤミ金から闇バイトを斡旋され、特殊詐欺に加担した容疑で、58歳(当時)の男が逮捕された。この容疑者は生活困窮に陥ったことでヤミ金に借り入れを申し込んだ。しかしながら、ヤミ金は融資を断った一方で、闇バイトを紹介。この男に「出し子」として詐欺グループに加担するきっかけを作った。

 給与ファクタリングの流れをくむ、最近の「後払い現金化」「先払い買い取り」そして「ギフト券買い取り」といった手口のヤミ金は、警察介入を極端に恐れている。支払いに行き詰まった顧客が警察など公的機関に駆け込むようなことがあっては、困るのだ。そのため、延滞発生を極力抑え、「しっかり返せる人」のみを顧客にすべく、審査を厳格化している。