ところで、ヤミ金が求める別の闇バイトとして「銀行口座(時にはスマホ)の譲渡」がある。“短時間で高収入”な闇バイトの典型である。一部のヤミ金は返済が困難になった債務者に対して、銀行口座の譲渡を提案してくる。

 譲り受けた銀行口座はヤミ金自身が運営するビジネスで使える大切な道具でもあり、また特殊詐欺グループに20万円程度で転売できる価値をもつ。このように、ヤミ金と特殊詐欺は、いわば商圏が重なっている。そこで、ヤミ金と特殊詐欺を兼業する組織も現れているそうだ。

 もちろん、これは譲渡する方も違法行為に手を染めることになる。後日その不正を認識して、近所の交番や警察署へ相談に行く債務者も散見されるそうだ。そして不幸にも、譲渡した銀行口座が多額の被害を発生させた特殊詐欺事件で利用されていたことが発覚して、後に逮捕されるケースもままある。

多重債務者をカウンセリングで
救済する必要性

 このように、ヤミ金からの借入金で火の車になっている債務者は、闇バイトなど違法行為に手を染める危険性が高いという現状がある。やはり今日の日本において、多重債務者に対するカウンセリングによる救済制度が必要なのだろう。

 さて今回の原稿では、ヤミ金が背後に隠れている闇バイトに関する事件を解説したが、読者の中には、闇バイトに加担したヤミ金の借受人が男性ばかりである点に気付かれたかもしれない。

 なぜ女性はいないのか? この理由として、SNSを用いた個人間融資、いわゆる「ひととき融資」という卑劣な手口で生活に困窮する女性に近づく別のヤミ金の存在があると考える。いわゆる“パパ活”との線引きが難しく、警察もその摘発に苦慮するヤミ金犯罪である。こうした個人間融資の実態に関しては別の機会で解説したい。

【参考記事】
・産経新聞「『熱心な教師』凶行の実態 アリバイ工作・想定問答メモも 江戸川殺人」2023年5月16日
 ・Yahoo! ニュース 「子どもはだましやすく使い捨てやすい『コマ』」2023年8月7日
・長崎新聞「『一発逆転』狙って… SNSの“闇バイト”応募 長崎で逮捕の男」 2023年2月18日
・時事ドットコム「狛江市の強盗殺人事件 ギャンブル好き、ヤミ金で借金も」2023年2月23日 
・北海道ニュースUHB「ヤミ金融業者が闇バイトを斡旋」2023年6月14日
・プレジデントオンライン「ルポ特殊詐欺 緊縛強盗で奪った1000万円を、闇金業者に奪われて…元自・衛隊員の男が手を染めた『闇バイト』の末路」2022年11月27日