この容疑者男性の58歳という年齢から察すると、ヤミ金は信用リスクが高いと判断する一方で、金に困っている弱みに付け込んで闇バイトへ誘導したのかもしれない。
前回記事(「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い、ギフト券買い取り商法などの狡猾手口)の中で、警察がヤミ金の摘発に「本気」にならざるを得ない理由の一つとして、「ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまう」点を挙げた。
実際、ここまでみてきたように、ヤミ金という反社会集団と関わりを持つことで、闇バイトへ接触する抵抗感は薄れ、さらに金銭面でのひっ迫が続くことで、闇バイトへの関与を段々と深めていったと推察される事件は後を絶たない。
「困ったときに優しくしてくれた」
ソフトヤミ金の跋扈
コロナ禍の混乱に加え、インフレが追い討ちをかける中、経済的困窮に陥る消費者が増えている。苦しい中で、返済条件の変更や、再度の融資に応じてくれるヤミ金もあり、借受人は「恩義を感じる」ようになっている。こうしたアプローチで生活困窮者に接触するヤミ金は「ソフトヤミ金」とも呼ばれ、貸金業法が施行された2010年頃からニュースでも報道されるようになった。そして、このような不可思議な関係性を深めた上で、ヤミ金は債務者に対して尋常ならざる奇異な関係を抱かせるように仕向ける。
以下、闇バイトの事件を通して発覚した、債務者とヤミ金の間で築かれた異常な関係性を示唆する不思議な事件を紹介する。
2020年12月に闇バイトで受け子として被害者から多額の金を奪い、その指示役に手渡すべき1000万円もの大金をヤミ金に盗まれたと警察に通報した21歳(当時)の男がいた。その後の警察による取り調べに対して、この男は「受け子」「出し子」、そして「監視役」などで詐欺グループに加担したことを自白した。