では、「あなたのことを信用しています」と「あなたのことを信頼しています」、相手から本当に信じられていて、これから仕事を一緒にしていきたいと思われているのはどちらでしょうか?

 正解は、「信頼」です。

「あなたのことを信用しています」は、過去の発言・行動に問題がないことを示しています。過去のあなたの行動と同じように、これからも「今まで通り」にお願いします、という意味になります。

「あなたのことを信頼しています」は、これから先、あなたと一緒に仕事をしていきたい、ということを示しています。こちらの方が若干、「より仲良くしたい」というニュアンスがあると言えるわけです。

 僕たちはなにげなく、何も考えずに、「あなたを信用していますよ」とか「彼に信頼をおいている」とか、聞き流してしまいます。

書影『東大生と学ぶ語彙力』『東大生と学ぶ語彙力』(筑摩書房)
西岡壱誠 著

 でも、実は語彙力のある人は、「信用」「信頼」という「信」にどんな漢字をくっつけるかというその漢字一文字をしっかり使い分けて、自分の価値観を相手に伝えていることがあるんです。もしかしたら、みなさんはそんな微妙なサインに気づけていないのかもしれません!

 だって、ちょっと変な話、好きな人が「君のことを信用しているよ」と言うのと、「君のことを信頼しているよ」と言うのだったら、後者のほうが脈有りだって話なんです。みなさんは、もしかしたらそういう異性のサインを見逃していたかもしれないということなんですよ?

 というのは半分冗談にしても、もしみなさんが語彙力を鍛えたいと思うのであれば、「なぜこの人は、信用という言葉を使ったんだろう?」「信頼という言葉を使わなかった意味はあるのかな?」と、普段から考えるようにしましょう。言葉に対する感度を高めて、普段から言葉を調べる訓練をしておく必要があるのです。