米国のドライバーは長年、北の隣国を犠牲にすることで贈り物を得てきた。人工的に安くなっていた原油だ。大規模なパイプラインの拡張によって、カナダ産原油を世界の市場に輸出しやすくなれば、そうした状況は一変する可能性がある。長年にわたる供給過多の主な受益者は、両国の価格差の大半を懐に入れてきた米石油精製業者だが、彼らにはどのような影響があるのか。米国は日量約400万バレルのカナダ産原油を輸入しており、これは国全体の精製能力の5分の1以上に相当する。カナダのアルバータ州エネルギー規制当局のデータによると、カナダオイルサンドの価格指標であるウエスタン・カナディアン・セレクト(WCS)は、2022年と23年に、米国の原油価格指標ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)を平均で1バレル当たり約18~19ドル(現在のレートで約2700~2860円)下回っていた。この差の一因は、WCSはより重質のブレンドであるため、余計な処理の手間や操業コストを必要とすることにあるが、パイプラインの能力不足も原因の一つだ。
米で格安のカナダ産原油、別れのとき
パイプライン拡張で供給過多による長年の恩恵がなくなっても、当面は問題ないとみられる
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