画像:セプテーニ・ホールディングスの開示資料セプテーニ・ホールディングスが2月15日に公表した開示資料

電通の上場子会社であるセプテーニ・ホールディングスが、代表取締役社長による2000万円超に及ぶ経費の不適切利用があったと公表した。そのリリースだけを見ると「問題は解決済み」に思えるが、筆者が入手した【厳秘】と記された同社の内部資料や社内関係者の証言などをたどっていくと、大きなガバナンスの問題が未解決のまま残されていると言わざるを得ない。(イトモス研究所所長 小倉健一)

公表資料には載っていない
フランス渡航の航空費でも私的利用

 2月15日付で、電通の上場子会社であるインターネット広告会社大手のセプテーニ・ホールディングス(以下、セプテーニHD)は「代表取締役による経費の不適切利用と再発防止策に関するお知らせ」と題する文書を発表した。

 同書によれば「当社代表取締役佐藤光紀(2024年3月27日開催予定の第33回定時株主総会終結の時をもって当社代表取締役および取締役を退任予定)による経費の不適切利用が2023年9月に確認された」として、セプテーニHDは経費の不適切利用の概要を公表。「会社経費とした費用(主にハイヤーを中心とした旅費交通費)の一部について、業務上の必要性に疑義が認められることが判明」したという。

 佐藤社長は社長・代表取締役を3月に退任することが決まっているが、セプテーニHDはそのことと「本件との関連性はございません」としている。また、不正利用した約2200万円を佐藤社長が自主返納済みであることと再発防止策を併せて公表するとともに「連結業績への影響は軽微です」と結んでいる。

 この文書だけを読むと「問題は解決済み」という受け止め方をすることも可能なのだが、セプテーニHDの社内への取材を進めると、ちょっと違う印象を持つ。佐藤社長を知る社内の関係者は、筆者の取材要請に対して匿名を条件に受け入れ、こう明かす。

「発表された文書には記載がないが、佐藤社長による不適切な経費の支出については、社長による私的利用のハイヤー代だけではなく、家族分の旅費への流用も発覚している。また、私的なフランス渡航の航空費も含まれていた」

 先ほどの公表文書とは別に、筆者の手元には【厳秘】と記されたセプテーニHDの社内文書「佐藤代表取締役社長執行役員の会社ハイヤーおよび旅費交通費の私的利用に関する報告」(以下、「厳秘資料」とする)がある。セプテーニHDの監査役会から、同社取締役会へと提出された報告書だ。

 この厳秘資料には、確かに今回の公表文書には掲載されていない、佐藤社長による経費の不適切利用のより詳細な内容が記されている。

 さらに、筆者の手元には、もう一つ入手した文書がある。香港の投資ファンドでアクティビスト(物言う株主)であるオアシス・マネジメント(以下オアシス)が、セプテーニHDの代表取締役社長である佐藤氏に宛てた文書だ。その中でオアシスは、セプテーニHDに対して厳しく経営改善を求めている。

 この二つの資料をひもときつつ、セプテーニHDが「問題は解決済み」とはいえない状況にあることを解き明かす。