資格剥奪された4人は、中国政府から見て「危険人物」?

 だが、その裏でヒューゴー賞にも「中国らしい」事態が起きていた。

 実は資格剥奪された4人には、周囲が「中国政府が介入した」と考える理由がそれぞれあった。

 まず、R.F.クアンはアヘン戦争を題材にしたデビュー作『ポピー・ウォー』で、毛沢東を10代の女性に見立てて描いている。また、今作『バベル』も、アジアの孤児院からイギリスに引き取られた子どもが、言語を媒介にした国際的スパイ訓練機関へと送り込まれるというあらすじで、中国にとってあまり気分の良いものではなかったようだと指摘されている。

 シーラン・ジェイ・ジャオも話題のデビュー作『鋼鉄紅女』で武則天を主人公に描いた。つまり、クアンもジャオも、中国的にいえば「歴史的修正」を行ったことになる(もちろん、SFだが)。また父親が中国の少数民族・回族であることを明らかにしているジャオはさらに、英『ガーディアン』の取材に対して「過去わたしが中国に対して行った批判的な言論も問題視されたのだろう」と述べている。

 また、ニール・ゲイマンはペンクラブのメンバーであり、これまでも中国政府の言論統制や報道規制に対する批判をたびたび口にしてきたり、言論罪で逮捕された作家たちの釈放を求める請願書にも署名したりしたことがあった。ポール・ワイマーも成都ワールドコンへの支持を表明しつつも、SNS上で香港問題や天安門事件について述べたことや、中国人LGBTQ作家を称賛したことが引っかかったのではないか、とみられている。