東大生の就職先としても注目され、人気が高いコンサルティングファーム。一流のファームでは、どんな採用基準で人を見ているのか?『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』の著者であり、コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏に、その傾向の変化を聞いた(書籍から一部を抜粋・編集して掲載しています)。

「ただの物知りな人」と「活躍できる一流コンサル」の決定的な違いとは?Photo: Adobe Stock

「お! 全く知らないのが来た! やるぞ!」と言えるか?

 コンサルタントは、プロジェクトの度にクライアントやテーマが変わります。最近は、実行支援やPMOなどの長期プロジェクトや、業界もしくは業務の高い専門性を有するコンサルタントが同じ業界やテーマのプロジェクトに従事することが増えましたが、それでもコンサルタントであるならば、これまでとは異なるクライアントやテーマのプロジェクトにアサインされることがあります。

 これまでに経験したことがない業界やテーマを扱うわけですから、新しく本を何冊も読んだりWEBサイトを見て回ったりして、一日も早くキャッチアップすることが必要になります。このような状況に対して、どのような反応ができるかが、コンサルタントとして問われます。

「うわっ、全く知らないのが来た……やらなきゃ……」というマインドでは結果を出せないですし、何よりも仕事を楽しむことができません。むしろ「お! 全く知らないのが来た! やるぞ!」という前向きなマインドでないと、コンサルタントという仕事を楽しむことはできません。逆に、楽しむことができれば、得てして成果も出るものです。これが、コンサルタントに求められる「知的好奇心」です。

「深く知りたい」だけではなく「広く知りたい」が大事

 一般的な「知的好奇心」は、ある物事に興味関心を持ったら、「それをもっと深く知りたい」と思う気持ちのことを指しますが、コンサルタントの場合はこれに加えて「興味関心が広い」ことも必要になります。

 プロジェクトによってクライアントやテーマが変わりますので、プロジェクト中はそのクライアントの業界や会社、クライアントが抱えている問題の領域やテーマについて「もっと知りたい」という知的好奇心を働かせますが、プロジェクトが変わればまた別のクライアントやテーマに対して同様に「もっと知りたい」と思わないといけません。ずっとひとつのことに対して抱き続ける知的好奇心ではなく、他にも興味関心を持つ「広さ」が必要になります。

 これは決して「良し悪し」ではありません。人によっては、ただひとつの物事に対してのみ知的好奇心を抱き、それを徹底的に調べて理解して「知る」ことが好きなタイプももちろんいます。学者や研究者に多いタイプで、本書で扱っているコンサルタントとは別のものになります(「エキスパティーズ(Expertise)」として、コンサルタントが専門的な助言や見解を得るためにインタビューをしたりします)。

「興味関心が広い」のに加え「アンテナが高い」となおよいです。一般的に「アンテナが高い」というと、色々な幅広いことをたくさん知っている人を指しますが、コンサルタントの場合は、「何気なく見ただけの情報をしっかりとインプットし自在に使える」あるいは「ほとんどの人が知ってはいるが認識まではできていないような情報を自在に使える」ことが求められます。

 こうした知的好奇心の広さ、アンテナの高さは、ケース面接でも見られています。
 考える対象やお題に対して、「そういえば少し前にニュースでこういう記事を見ました」とか「この前行ったお店でこのようなことがありました」と記憶をつなげられる人は、コンサルタント的なものの見方ができています。おそらくその時はそれほど気には留めておらず、「ただ見ただけ」「ただ行っただけ」のはずなのに、いざ考え出した時に記憶の中から引っ張り出し、根拠となるファクトとして使えるかが重要なのです。

 ケースの結論を出した後に、結論の根拠としているファクトを改めて見てみると、意外なことに世の中の大抵の人が知っていることだけで成り立っていることもよくあります(ケース面接で扱う対象は基本的に一般消費財などの誰でも知っている商品やサービスなので、専門的な知識は不要です)。

 これも一見難しいと思うかもしれませんが、私の経験上はただの「慣れ」だと思います。ケース対策を含めた色々なやり取りの中で、「アンテナを高くする」という「気づき」を得た人は、その後の日常からのインプットが変わります。

 インプットが変われば「洞察力」が養われ、さらに色々な情報がインプットされてきます。そうすると、もっと知りたいという「知的好奇心」が出てきて、さらに深く調べたり考えたりするようになり、自然と「興味関心が広く」なります。

(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです)