コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏はコンサルティングファーム志願者の「駆け込み寺」として、多くの内定者を送り出してきた。著書『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』では「ファームに入社した人の共通点」「具体的にどんな対策をすれば受かるのか」「入社後活躍する人とは」などについて、史上初めて実際に入社した3000人以上のデータを分析し「ファクトベース」で伝えている。「コンサルティング業界への転職を考えている」という人はもちろん、「キャリアチェンジを考えたい」さらに「コンサルタントのスキルが気になる」という人まで、マッキンゼー、BCG、ベインなどの「経営戦略系ファーム」そしてアクセンチュア、デロイト、PwCなどの「総合系ファーム」対策の全てが詰まった完全保存版の一冊だ。今回は本書から、「コンサルティングファームに選ばれる年齢」について抜粋・編集して紹介する。

「コンサル転職は若くないとダメ」は都市伝説

 コンサルティングファームに入社できる年齢についても、学歴と同様とてもよく質問を受けます。
 特に多いのが、「コンサルファームには、20代でないと入社できないんですよね?」という質問です。これについては「都市伝説です」と即答しています。ぜひ、「思い込み」や「都市伝説」に惑わされず、ファクトを確認してください。

 コンサルティングファームの中途採用の年齢は、次の5つに分けて考えます。それぞれ採用の特徴が異なりますので、順に説明していきます。

①20代(第二新卒:社会人経験1~3年)
②20代(社会人経験3年以上)
③30代前半(30~33歳)
④30代半ば(34~35歳)
⑤30代後半(36歳以上)

①20代(第二新卒:社会人経験1~3年):「若手が足りていないファーム」を狙え

 実は大手のコンサルティングファームは基本的に第二新卒採用にはそこまで積極的ではありません。採用要件として、「職務経験2年以上」や「3年以上が好ましい」としているファームもあります。その一番の理由は、大手ファームは新卒採用をしっかりと行っており、若手層は「足りている」状況だからです。

 コンサルティングファームの新卒採用は、他の業界とは違い明らかに企業側が有利な買い手市場です。その難関をくぐり抜けてきたコンサルタントの論理的思考力などのソフト面でのポテンシャルはズバ抜けています。コンサルティングファームは、「コンサル未経験の中途採用が主」ですが、それは前述した通り「事業会社の理解」や「社会人としての肌感覚」を求めるからです。第二新卒は、「まだ社会人としての経験が不足している」と見られますので、新卒のコンサルタントと比較された場合、コンサルティングスキルは新卒コンサルタントの方が既に上回っており、社会人としての経験もまだ不十分です。要するに、中途半端な位置づけになります。

 過去の私の経験では、「学生時代に企業インターンの経験があり、かつ正社員とほぼ同じ仕事内容をやっていて、新卒後の社会人経験と合わせて3年以上の職務経験がある」というかなり特別な場合以外は、採用に至ったのを見たことがありません。

 こうした場合を除くと、チャンスがあるのは「若手が足りていないファーム」です。若手が欲しくても新卒採用は1年に一度しかないため、第二新卒を採用することがあります。もし第二新卒を狙うなら、受けられるファームをしっかりと洗い出す必要があります。

②20代(社会人経験3年以上)、③30代前半(30~33歳):最も採用されやすい

 ②③の年齢層は、コンサルティングファームが最も採用したいボリュームゾーンです。社会人としての経験は十分積んでおり、現職で実績や成果をあげて、一番脂がのっている時期でもあります。ファームとしては、この年代でコンサルタントとしてのポテンシャルが高い人を採用してしっかりと育成することができれば、40歳前後でパートナーになれる事例が多いことを、経験からわかっています。
 ただし、ちょうど②と③の間の「30歳」を境に、採用のされ方は少し変わります。

 特に30代前半になると、面接での見られ方がやや厳しくなります。20代後半はシニアアナリストでの採用がほとんどですが、30代前半はシニアアナリストまたはコンサルタントでの採用となります。そのためケース面接では、聞かれたことの一つひとつに対して自分の考えをしっかりと述べるだけではなく、ケース全体を把握し最初から最後までをある程度自走できるかどうかを見られます。

 コンサルタントとシニアアナリストでは年収水準が大きく異なるので、特に商社や金融機関などの現在年収が高い人の場合は、30代前半ではコンサルタントを目指した転職活動を行う必要があります。

④30代半ば(34~35歳):最近はシニアアナリストでの採用もあり

 この年齢層から徐々に採用に至る難易度が上がります。一番の理由は、シニアアナリストより一段ランクが上のコンサルタントでの採用が前提となるためです。

 ファーム側は、社内での「年齢とランク、給与のバランス」を気にするので、30代半ばの人をシニアアナリストで採用することは基本的にはありません(早い人は20代後半から、平均的には、30代半ばでマネージャーになる人が多く、あまりに歳上の人が下のランクにいると仕事がやりづらいという問題もあります)。つまり、「コンサルタントで採用される」か、「不採用」かの2択になるわけです。30代半ばでシニアアナリストで入社しても、その後マネージャーになれた割合は低いという統計データから、採用の難易度を上げているファームもあります。

 しかし2010年代に入ってから、この傾向が変化してきています。30代半ばの人を、シニアアナリストで採用するファームが増えてきました。ファームの採用・育成ノウハウが蓄積され、手掛けるプロジェクトの幅が拡がったことで、30代半ばの人の活躍の場が拡がっているためです。ファーム内に「34~35歳でシニアアナリストで採用」という事例が増えたことで、さらに採用しやすくなるという好循環も出てきています。

⑤30代後半(36歳以上):可能性はゼロに近かったが……

 従来は可能性が限りなくゼロに近く、超高学歴・超有名大企業で経営企画を経験・海外トップスクールMBAホルダーであれば、ごく稀に採用になるケースがあったくらいでした。

 しかし、④と同様36歳以上でも(他の年齢層より難易度が高いことは大前提ではありますが)状況は変わってきています。特定の業界や業務・ITの高い専門性を持つ人が、採用に至るケースが増えているのです。

 具体的には、業界の専門性(製造業界、金融業界、エネルギー業界、プラントエンジニアリング、官公庁など)、業務の専門性(R&D、生産製造工程、サプライチェーン、M&A、財務経理など)、ITの専門性(SAPやSalesforceなどのパッケージ、大規模システム開発のPM、AI、デジタルなどの最新技術など)を持つ人です。これらは近年の経営環境の変化によりコンサルティングのニーズは高まっているものの、ファーム内に高い専門性を持つコンサルタントが少ない、もしくは足りない領域になります。

 大手総合系ファームだけでなく、一部の外資経営戦略系ファームでも採用に至るケースが増えています。