東大生の就職先としても注目され、人気が高いコンサルティングファーム。一流のファームでは、どんな採用基準で人を見ているのか?『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』の著者であり、コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏に聞いた(書籍から一部を抜粋・編集して掲載しています)。

【マッキンゼー、ボスコン】一流コンサルファームの面接では、何を聞かれるのか?Photo: Adobe Stock

コンサルのケース面接とは何か?

 コンサルティングファームで行われる「ケース面接」とは、「面接官が出したお題(ケース)について、お互いの考えや意見を提示し合い(ディスカッション)、一緒に解決策を導く」ことです。具体的な対策は第5章で説明しますが、まずはその大前提となる基礎知識をお伝えします。

 ケース面接のやり取りの中で、面接官は、求職者の考え方(インテレクチュアルスキル)とそのポテンシャルを見て、
・プロジェクトメンバーとして一緒に仕事ができるかどうか?(スキルの確認)
・コンサルタントとして一人前に育成できるかどうか?(ポテンシャルの確認)
 を判断します。

 実に様々なケースがありますが、よく出されるケースを大きく分けると次の3つになります。いずれのケースも、第3章で紹介した「インテレクチュアルスキル(ロジカルシンキング、洞察力、思考スピード)」を見るのが主な目的です。

①数値算定系
ある商品やサービスなどの売上や市場規模を算定させるケース
(ロジカルシンキングと思考スピードを見られる)

②売上向上系
ある商品やサービスなどの売上や市場規模を向上させるケース
(ロジカルシンキングと洞察力、思考スピードを見られる)

③問題解決系
ある企業の問題や社会的な問題などを解決させるケース
(ロジカルシンキングと洞察力、思考スピードを見られる)

答えではなく「考え方」

 ケース面接で見られているのは、決して「答え(が合っているかどうか)」ではありません。見られているのは、あくまで「考え方(インテレクチュアルスキル)」です。対策は、兎にも角にも自分で考えることが重要であることをしっかりと認識してください。

 コンサルティングファームを受ける人は、これまでの人生で大学受験をはじめとする様々な「試験」を経験してきています。そのため、「問題」を出されると、ついつい「答え(正解)」を出さなければならないと思ってしまう人が多いです。ケース対策についても、勉強する時のように「問題集を解いて公式や解法を理解して使えるようになること」に主眼を置き、「正解を答えよう」としてしまうのです。

 それだと考え方(途中の思考プロセス)を見たい面接官は何も評価することができません。最悪の場合、「思いつきで話しているだけで考えていない」という評価になってしまいます。実際、私が戦略ファームの採用担当パートナーと話していて、「みんなが同じような解答をしてくるのでケース面接がつまらないんですよ……」という嘆きを聞くことがあります。

 なぜ「正解を答える」のがダメなのか。これは、本質に立ち返って「コンサルティング」という仕事の内容を考えてみれば、自然に理解できます。
コンサルタントの問題解決は、知識や経験からアドバイスするのではなく、まず問題を明確にし、その原因を特定し、そして解決策を導き出します。ファクトベースかつ論理的に考えて問題を解決するのがコンサルタントの問題解決方法であり、それを支えているのがインテレクチュアルスキルです。

 20代、30代でコンサルタントになった人が、大企業のマネジメント層に対して、「以前こういうことをやった経験があるので(あるいは、こういうことが○○に書いてあったので)、実践してみたらいかがでしょう」という問題解決をしたら、どうでしょうか? 残念ながら、何の付加価値もないことは、すぐにわかると思います。さらに、知識や経験だけをベースにしている限り、これまでになかった新しい問題は解決できません。

 ゆえにケース面接では、「論理的に問題を解決する」考え方ができるかどうかを見て、コンサルタントとしてのインテレクチュアルスキルとポテンシャルを測っています。

 もちろん、対策だけでコンサルタントと同等のスキルを身につけることはなかなかできません。それでも、正しく対策することによってコンサルタントのスキルがどのようなものなのかの理解を深め、近づくことはできます。正しい対策は、コンサルタントがどのようにしてスキルを得るのかを参考にすると、見えてきます(詳細は第5章で説明します)。対策や練習は、ただやみくもにやっても高い効果は期待できません。このような前提や背景を理解した上で取り組む必要があります。