コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏、はコンサルティングファーム志願者の「駆け込み寺」として、マッキンゼー、BCGなどの経営戦略系ファーム、そしてアクセンチュア、デロイトなどの総合系ファームに、多くの内定者を送り出してきた。著書『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』では「ファームに入社した人の共通点」「具体的にどんな対策をすれば受かるのか」「入社後活躍する人とは」などについて、史上初めて実際に入社した3000人以上のデータを分析し「ファクトベース」で伝えている。
今回は、本書の内容から一部を抜粋・編集し、「面接」について紹介する。

面接後に「ここがよかった、ダメだった」という振り返りは最悪

 私はこれまで17年間、コンサルティングファームの面接の指導を行っています。その中で感じるのが9割の人が間違った「面接対策」を行なっているということです。

 ケース面接でも、通常の面接でも最も重要なのが、「面接を受けた後は、必ずしっかりと振り返りを行う」ことです。折角ファームの面接を経験し、1時間頭をフル回転させたわけですから、この貴重な経験を次の面接に活かさないわけにはいきません。本番の面接は、一番いい対策でもあります。

 振り返りの際は、まずは面接官とのやり取りを思い出し、全て書き出します。

 この作業は「客観的に、ファクトベースで」行うことが大事です。面接官とのやり取りを客観的にファクトベースで確認するのは、自分自身の「ここがよかった、あそこがダメだった……」という主観が入ると、具体的なロジックの良し悪しがわからなくなるからです。

 特に選考序盤は、求職者はまだどのような内容が面接官から高く評価されるのかがわかっていません。結果、面接官の表情や反応に影響されてしまい、面接官の評価と求職者の自己評価にズレがあることが多いです。書き出したら、次の振り返りチェックポイントを確認していきます(客観性を担保するためにも、振り返りはできれば一人ではなく、エージェントと1対1で行うのがおすすめです)。

【振り返りチェックポイント】
・通常質問でロジカルに回答できたか(ロジック)
自分でも「わかりづらかったな……」という回答はありませんでしたか。ケースだけではなく、通常質問で必ず聞かれる志望動機や職務経験を話す時にもロジックを見られています。質問への回答として、結論(最も伝えたいこと)とその根拠(結論を支えるファクトやエピソード)を明確なロジックで話せたかを確認します。

・面接官の意図・目的を汲み取れたか(納得感)
質問に対して、独りよがりな内容を話していなかったでしょうか。質問には、面接官の意図・目的があります。必ず面接官の立場で「何を確認したいのか?」「どのような回答を期待しているか?」を考えることが重要です。その上で、話した後に面接官の反応や表情を確認しましょう。決して「自己満足」で終わってはいけません。

・面接官の発言をふまえた回答ができたか(素直さ)
面接官の発言に対して、否定や反論をしていなかったでしょうか。面接官が何か意見や示唆をしたとき、素直に受け入れて、自分の考えを進展させることができる人かを見られています。これも、ケースだけではなく、通常質問でも見られています。面接官からの意見や示唆を頭ごなしに否定するのではなく、一度きちんと受け止めて、その内容をしっかりとふまえた自分の考えを伝えるように心掛けましょう。

・自分の考えや意見を面接の時間内で改善できたか(成長力)
面接官は、よく自分の考えや意見を話してきます。これは求職者への示唆やアドバイスのことが多いのですが、求職者側が取り入れるかどうかは前述した「素直さ」により決まります。面接官は、アドバイスを取り入れた結果、求職者の考えがどれくらい進んだかよい方向に変わったかで「成長力」を評価します。「成長力」は、面接と面接の間だけでなく、1回の面接内でも見られています。

・面接官のリアクションにいちいち惑わされなかったか(ロジック・納得感)
面接官のリアクションが良くても悪くても(またはなくても)、全く気にしないでください。求職者がやるべきことは変わりません。相手の質問にロジカルにわかりやすく回答するだけです。面接官のリアクションにつられてしまうと、このやるべきことが疎かになってしまうことが多いです。

・「突っ込み」に慌てず対応できたか(ロジック・納得感・物怖じしない)
「リアクション」と同類ですが、面接官はコンサルタントですので、求職者の回答に対して、「なぜ?」「どうして?」と突っ込んで聞いてくることがよくあります。しかし、これは決して「圧迫面接」ではありません。コンサルタントは、純粋に求職者が話した内容に「わからないこと」があったから聞いているだけです。つまりただの素朴な疑問です。ゆえに、聞かれたことに対してもロジカルに回答すれば面接官は納得してくれます。過剰に反応して気にする必要は全くありません。
ちなみに、いわゆる「圧迫面接」というのは、どれだけロジカルな回答をしても、その一切を否定してくる理不尽極まりない面接のことをいいます。ファームの面接では、間違ったロジックは否定しますが、正しいロジックはちゃんと通りますので、「圧迫面接」のような理不尽さは一切ありません。

致命的なのは面接官の評価と自己評価のズレ

 最後に、最も重要な振り返りのポイントをお伝えします。

・面接官の評価と自己評価にズレがないか(ロジック・コンサルの理解度)

です。

 求職者の側からは、「何が評価されているか」はとてもわかりづらいです。特に、選考序盤は、なおさら何が評価されるのかはわかっていません。

「面接官が明るい表情で大きく頷いていたため、候補者は『納得してもらえた』と思って意気揚々と『面接はよくできました!』という感想を伝えてきたものの、内容をファクトベースで確認するとロジックがいまいちで、面接の結果もお見送りだった……」

「面接官が無表情・無反応で、候補者が何をどう話しても面接官は淡々としていたため、候補者は『面接は全然ダメでした……』と明らかに意気消沈しているものの、内容を確認するとロジックはしっかりと通っていて、後日面接通過の連絡がきた」

 これはどちらもよくあるパターンです。

 いずれも、ファームが面接で見ているポイントを、求職者が正しく理解できていないために起こることです。ファームの評価と求職者の自己評価がズレてしまっています。

 このズレは、選考の序盤は仕方ありませんが、早めに改善しなければなりません。改善しないと、求職者は「どのような回答が面接で評価されるのかわからないまま面接を受ける」ことになり、面接通過が運任せになってしまいます。面接官が期待している内容を狙って話せるようになるために、面接内容をファクトベースで確認し、求職者の自己評価と実際のファームの評価のズレを修正していきます。振り返りは不可欠なのです。

 面接の振り返りによるこのズレの修正は、もちろんケース面接でも同様に行います。
 このズレを修正することで、より一層コンサルタントの考え方の理解が深まります。