韓国メディアの女性記者は
リ監督に何と言った?

 会見終了後、筆者が通訳に確認したところ、女性記者は北朝鮮代表の伝統でもある「フィジカルの強さの源」を尋ねた質問のなかで「北韓(ブッカン)」という言葉を使っていたという。

 日本では聞き慣れない「北韓」とは、韓国国内における北朝鮮の呼び名である。だが北朝鮮側は、その呼称を蔑称として忌み嫌っている。いわば“禁句”である。にもかかわらず、自国を「北韓」と呼ばれたリ監督は、さらにたたみ掛けた。

なでしこに敗れた北朝鮮監督「号泣会見」の裏事情、引き金となった韓国人記者の“禁句”とは?北朝鮮代表のリ・ユイル監督  Photo:Etsuo Hara/gettyimages
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「われわれは北韓のチームではなく、朝鮮民主主義人民共和国の代表チームだ。あなたが国号を正確に呼ばなければ、われわれはあなたの質問を受けつけない」

 振り返ってみれば、日本サッカー協会(JFA)も、記者会見を含めた公の場や公式リリースでは「朝鮮民主主義人民共和国」「DPRコリア」という正確な国号を必ず用いている。北朝鮮という呼称は使わないのだ。

 しかし、女性記者は国号に関する発言の訂正に応じないどころか、挑発するかのように「それでは、国号をつけずに質問してよろしいでしょうか」と返した。質問を最後まで聞いたリ監督は、厳しい表情を浮かべながら「非常に簡単な質問ですね」と皮肉を言い返し、フィジカルの強さについて次のように答えた。

「国を代表して戦っている点ですね。国を輝かせたい、という気持ちが強いからだと思います。彼女たちはさらに家族や親戚、友人など多くの人たちにも期待されている。そうした思いに是が非でも応えたい、といった気持ちも彼女たちのパワーの源になっていると思います」

 こうして、リ監督と韓国メディアとの舌戦はひとまず終わりを迎えたように見えたが、実は第2ラウンドがあった。日本代表との試合後、また別の韓国メディア記者とトラブルが起きたのだ。