北朝鮮拉致問題で対話路線に舵、岸田首相「電撃訪朝」はあるか2月25日に記者会見する拉致被害者家族会のメンバー。拉致問題を巡って新たな方針を打ち出した。被害者家族の高齢化もあり、対話路線に舵を切ったとされる Photo:JIJI

 拉致問題は本当に動くのか。2002年9月に首相、小泉純一郎(当時)の訪朝で5人が帰国して以来、静止状態にある拉致問題を巡るニュースがしばしば報じられる。2月25日には拉致被害者家族会と支援組織の「救う会」の合同会議が新たな方針を打ち出した。

「わが国が北朝鮮にかけている独自制裁を解除することに反対しない」

 この制裁の中には、日朝間を往来していた万景峰号の入港禁止も含まれている。もちろん「被害者の即時一括帰国が実現するならば」の前提条件付きではあるが、圧力重視から対話路線に大きく舵を切ったといっていい。背景には被害者家族の高齢化がある。

 この日の会合にも出席していた横田めぐみ=失踪当時(13)=の母、早紀江は88歳、有本恵子=同(23)=の父、明弘は95歳に達している。首相の岸田文雄も施政方針演説でこう強調した。

「ひとときもゆるがせにできない人道問題であり、政権の最重要課題だ」

 確かに岸田は北朝鮮の最高指導者である朝鮮労働党総書記、金正恩との首脳会談に意欲を見せる。昨年5月27日、岸田は首脳会談実現に向け一歩踏み込んだ。

「私自身、直接向き合う覚悟でこの問題に臨む。私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」

 2日後の5月29日、岸田の呼び掛けに応えるように、北朝鮮の朝鮮中央通信が北朝鮮外務次官のパク・サンギルの談話を伝えた。

「日本が新たな決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするなら朝日両国が会えない理由はない」

 北朝鮮が日朝協議に向けて肯定的な姿勢を示したのは16年以来。異例の反応だった。ただし、拉致問題については「解決済み」との従来の主張を繰り返した。岸田が言及した岸田直轄チームの動きが伝えられることもなかった。