日本のビッグマック価格(530円)は
世界的には「不適切にもほどがある」かも

 ここで考えてみたいのですが、マクドナルドの価格は日経平均のようにこの先、過去最高値を突破していくのでしょうか?

 それを考えるために役立つのが、イギリスのエコノミスト誌が編み出した「ビッグマック指数」という考え方です。ビッグマック指数とは、世界各国のビッグマックの価格を比較することで為替レートが適切なのか、それとも不適切なのかを考えることができるという便利な経済指標です。

 そもそもなぜ、ビッグマック価格を比較すると経済が語れるのかというと、ビッグマックの価格にはさまざまな経済の要素が織り込まれているからです。

 つまりパンや肉といった基本的な消費者物価に加えて、人件費の要素も価格には入っていますし、光熱費などエネルギー価格の要素も入っていて、さらに店舗の賃料のような不動産価格も反映しているのです。

 そのビッグマック指数で基準になるのはマクドナルドの本社があるアメリカです。

 2024年1月に発表されたビッグマック指数の基準は、アメリカのビッグマック価格である5ドル69セントです。日本のビッグマック価格は私の住所がある新宿を基準にすると、現在は530円。この二つの数字から、いわゆる購買力平価説による為替レートが算出できます。

 計算してみると、ビッグマック指数から考察される「あるべき為替レート」は1ドル=93円ということになります。

 庶民の感覚的には「悪い円安で必要以上に物価が上がっている」と言いたくなるかもしれません。しかし、一段俯瞰(ふかん)して経済を眺める立場から見れば、「そのレートだと円高に行きすぎなんじゃないのか?」とも思えるわけです。

 確かに2010年代前半には1ドル=79円まで円高が進み、製造業を中心に日本経済は大きな打撃を受けた記憶がよみがえってきます。

「よくわからないけど、1ドル=120円ぐらいが正しいレートなんじゃないの?」

 仮にそのような前提を置いてみましょう。そもそも「よくわからないけど」という前提を置くこと自体、経済コラムとしてはツッコミどころ満載なのですが、それを言い出すと為替レートの適切さなど誰にもわからないという話に立ち戻ってしまうので、ここは我慢をして私の話を聞いてください。

 仮に1ドル=120円がいまの世の中のある種の均衡を満たしてくれる適切な為替水準だと想定してみたとしたら、実は現在のビッグマックの価格は「まだ適切な価格よりも安すぎる」ことになります。

 これもアメリカのビッグマック価格5ドル69セントを基準にすればすぐに計算できるのですが、1ドル=120円の世界でのビッグマックの適正価格は680円です。今の530円という価格は不適切にもほどがあるのかもしれないのです。