「左足ブレーキの方が安全」は本当?安全運転のプロが検証!論争にトドメを刺す結論は…Photo:PIXTA

アクセルとブレーキの踏み間違い事故を防ぐ方法として、「左足ブレーキ・右足アクセルで運転するべきだ」という論調が根強くあります。この技術はモータースポーツでは一般的であり、乗用車の運転に取り入れても違法ではありません。今回はレースで「左足ブレーキ」を駆使した経験を持つ筆者が、一般車の運転におけるメリット・デメリットを詳しくお伝えしていきます。(モータージャーナリスト、安全運転インストラクター 諸星陽一)

「左足ブレーキ・右足アクセル」本当に安全?
レース経験者の答えとは

 交通事故総合分析センター(ITARDA)の調査によると、2018年~20年の3年間で「アクセル・ブレーキの踏み間違い」による死傷事故が9738件起きたそうです。

 痛ましい事故が報じられるたびに議論の的になるのが、「ドライバーは右足アクセル・左足ブレーキで運転するべきではないか」というテーマです。というのも、実は現行の法規制では「左足ブレーキ」は違法ではありません。教習所では「右足一本でペダルを踏みかえましょう」と教わりますが、守らなくても取り締まりの対象にはならないのです。

「左足ブレーキの方が安全」は本当?安全運転のプロが検証!論争にトドメを刺す結論は…ITARDAによる調査結果(出典:ITARDA

 確かに、ブレーキを踏む足をあらかじめ決めておけば、踏み間違い事故を減らせるという考えは理解できます。そこで今回は、安全運転講習会や試乗会のインストラクターを務める筆者が「ブレーキはどちらの足で踏むべきか」を徹底解説していきます。

 ただし、詳しい解説をする前に、お伝えしておきたいことがあります。この議論になると、必ず「レーシングカートでは右足でアクセル・左足でブレーキを踏む」「レースやラリーでは左足ブレーキをよく使う」「だから乗用車でもやるべきだ」という意見が出てきます。

※編集部注:レースは「同時スタート」でゴール順位を競い、クローズドサーキットを使うことが多い。ラリーは「順次スタート」で走行タイムを競い、一般道を使うことが多い。ただ例外もある。

 この点について、実は筆者はレース経験者なので、そうしたテクニックを使うことは身をもって知っています。そして乗用車でもテストし、安全性や操作性を検証した結果を、今回は述べていきます。