道を譲ってくれた車に感謝の意を示す「サンキューハザード」。運転をしている際、円滑なコミュニケーションのためにチカチカと点滅させがちですが、実は「事故につながる危険な行為」だといえます。そう言い切れる理由を、安全運転講習会でインストラクターを務めた経験を持つ筆者が解説します。(モータージャーナリスト 諸星陽一)
道路交通法には
「お礼で使用可」の記載なし
車線変更をしたときや合流をしたときなどに、ハザードランプを点滅させる「サンキューハザード」という慣習がまん延しています。あなたも「お礼」の意味で運転中に点滅させた経験があるかもしれません。
ですが、これは間違った行為です。そう言い切れる理由を、安全運転講習会や試乗会のインストラクターも務める、モータージャーナリストの筆者が解説していきます。
そもそも、ハザードランプは正式名称を「非常点滅表示灯」といいます。お礼を伝えるためのランプではありません。その具体的な使い方については、道路交通法で以下のように定められています。やや難しい書き方になっていますが、条文をそのまま引用します。
・通学通園バスは、小学校等の児童、生徒又は幼児の乗降のため停車しているときは、車両の保安基準に関する規定に定める非常点滅表示灯をつけなければならない。
どこにもお礼のために使っていいとは書かれていません。ハザードランプは本来、やむを得ず路上で駐停車するときなどに、後続のドライバーに「前方に危険がある」ということを伝えるために使うものです。
その合図が、いくつもの意味を持つのは危険です。ハザードランプをお礼の意味で使うのは、本来の用途とかけ離れているともいえます。
とはいえ、渋滞後尾についたときや、事故や工事で突然停止したときなどにハザードランプを使うのは問題ないでしょう。また、最近のクルマは急ブレーキをかけると自動でハザードランプが高速点滅するものもあります。
これらは法で定められた本来の使い方とは少々異なりますが、「非常点滅表示灯」という正式名称に則した使い方です。事故や急停車といった「非常事態」を後続車に知らせているからです。
一方、次のような場面ではいかがでしょうか。