「救急車に道を譲らないドライバー」が増えている、あまりに皮肉な理由Photo:PIXTA

救急車などの緊急車両に道を譲るというのは、一般常識でありドライバーの義務です。しかし昨今は、消防隊員などから「道を譲らないクルマが増えている」という悩みが漏れ聞こえてきます。その裏側には何があるのでしょうか。自動車ジャーナリストの筆者が考察した結果、“あまりに皮肉な理由”が見えてきました――。(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)

救急車に道を譲らない
クルマが増えた!?

「救急車に道を譲ってくれないクルマが増えている」――。昨年、救急救命士を名乗るTwitter(現X)アカウントがそうツイートし、大きな反響を呼びました。他にもSNS上には、同様の投稿が多く見られます。

 実際に、総務省消防庁が公表した「令和4年版 救急救助の現況」によると、令和3年(2021年)中の救急車の現場到着所要時間(※1)は、全国平均で約9.4分(対前年比0.5分増)。病院収容所要時間(※2)は、全国平均で約42.8分(対前年比2.2分増)となっていました。

(※1)現場到着所要時間:入電から現場に到着するまでに要した時間
(※2)病院収容所要時間:入電から医師引き継ぎまでに要した時間

 さらに、どちらも01年の数値から5割ほど増加していました。その他にも原因があるかもしれませんが、救急車に道を譲らないドライバーが増えていることも関係していると推察されます。

「救急車に道を譲らないドライバー」が増えている、あまりに皮肉な理由令和4年版 救急救助の現況(出典:総務省消防庁
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 緊急走行中の救急車を含む緊急車両に道を譲るのは、道路交通法で定められたドライバーの義務。にもかかわらず、道を譲らないドライバーが増えているのだとすれば、それはなぜでしょうか。

 自動車メーカーで開発エンジニアを務めた経験を持つ、自動車ジャーナリストの筆者が考察していきます。