24年日本株はESG投資の「G」に大波!東証要請が株価を意識した経営の「起爆剤」にPhoto:Busakorn Pongparnit/gettyimages

2024年はESG投資が有効であり、日本企業のガバナンス改善が「ゲームチェンジャー」になる――。そのように考える理由について、企業開示の具体的な好例を挙げながら、詳細な分析を試みた。(JPモルガン証券ESG&サステイナビリティリサーチ責任者 佐野友彦)

東証の資本コスト改善を要請
取り組みの開示企業は増加傾向

 2024年の「ESG(環境・社会・企業統治)&サステナブル投資」はどこへ向かうのか。当社はこれを展望する際、日本企業の「G」(ガバナンス)の改善に注目している。

 東京証券取引所(以下、東証)は、今年1月15日、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧表を初めて公表した。同開示によれば、23年12月末時点で、プライム市場の49%(23年7月は31%)、スタンダード市場の19%(23年7月は14%)の企業が開示(検討中含む)を行った。

 東証が23年3月に資本コスト改善の要請を行ったことで、同開示企業は増加傾向にある。こうした開示などのフォローアップが続く中、日本のガバナンスの進化には今後も期待が持てるだろう。

 プライム市場およびスタンダード市場の上場企業に対し、東証はPBR(株価純資産倍率)1倍以上を目標にするよう求めている。このため、24年以降の企業の中期経営計画や市場との対話では、成長性や収益性、持続可能性、ガバナンスの向上が一段と重視され、結果として株式パフォーマンスにとっても引き続き追い風になると予想する。

 PBR1倍未満かつ時価総額1000億円以上のプライム市場上場企業の中で、前述の開示を行った企業の比率は、23年12月末時点で78%と、23年7月(45%)から急増した。

 時価総額1000億円以上の上場企業は、PBR1倍未満の現状に関し、資本コストや株価を意識した経営を実現すべく、スピード感を持って開示を進めている印象だ。一方、スタンダード市場では「検討中」を含む開示企業が23年12月末時点で19%と、プライム市場の同49%からは後れを取っている。

 同開示状況の集計ルールは、直近のコーポレートガバナンス報告書に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関して「開示済」、または「検討中」と明確に記載された場合のみが対象となっている。

 23年中に資本コストを巡る改善策を開示した企業であっても、同報告書に未反映の場合、今回は集計されていない可能性がある。よって、実態的な開示は今回の発表より進展していることも考えられ、株主総会シーズンに向けては一段の期待も持てる状況だ。

 以降では、24年はESG投資が有効であり、日本企業のガバナンス改善が「ゲームチェンジャー」になるとみる理由を詳述。資本コストや株価を意識した経営を巡り、企業の開示の具体的な好例をピックアップしながら、そのインパクトの大きさについてさらに詳細を分析していく。