政治資金問題を政倫審でガス抜き、「証人喚問」ができない理由【池上彰・増田ユリヤ】2024年2月29日に開かれた衆議院政治倫理審査会で弁明する岸田文雄首相 Photo:JIJI

真相解明は遠い政治資金問題

池上 自民党を巡る政治資金問題で、2月29日と3月1日に衆議院政治倫理審査会(政倫審)が開かれました。1日目には岸田文雄首相と、二階派の事務総長だった武田良太氏、2日目には安倍派の西村康稔氏、松野博一氏、塩谷立氏、高木毅氏の4人が出席しました。

 政倫審とは、〈政治倫理の確立のため、議員が「行為規範」その他の法令の規定に著しく違反し、政治的道義的に責任があると認めるかどうかについて審査し、適当な勧告を行う機関〉のことです。

増田 開催されるか否か、誰が出席するのか、非公開とするかなど、直前までもめていました。

 ただ、出席した自民党議員たちの“弁解”を聞いても、自分たちの行いが「法令に著しく違反し、政治的道義的に責任がある」と認識しているとは思えない内容でした。本来であれば政倫審ではなく、虚偽の答弁を行うと偽証罪に問われる証人喚問にすべきだったと思います。

池上 野党は当初から証人喚問を求めていましたし、政倫審後にも「真相解明には遠い。やはり証人喚問しかない」との声も出ています。しかし証人喚問を実施するかどうかを決めるのは国会対策委員会で、委員のメンバーは議席に比例して決まりますから、議会で多数を占める自民党が反対すれば実施できません。

増田 数は力ですから、やはりもう少し野党の議席数を増やさなければ与党に対抗できません。結局、政倫審はガス抜きにすぎないのでしょう。

池上 政倫審でも質問者側から「国民の納得を得られていない」と繰り返し指摘されていましたが、誰も彼も「政治資金報告書は訂正した」「誰がパーティー券の売り上げの還流再開を決めたのかは知らない」と言うばかりで、「自ら真相を明らかにし、国民に納得してもらえるまで説明を尽くす」という態度には見えませんでした。