岸田文雄「閣下」?
北朝鮮のしたたかな外交戦略
北朝鮮と日本の接近は、地政学的な分析以外からも読み取ることができます。
今年1月1日に発生した能登半島地震に対して、金正恩総書記が岸田首相宛に労電という見舞い電報を送っているのですが、その宛名に注目が集まりました。「日本国総理大臣 岸田文雄閣下」と書いてあったようで、外務省も日本の首相に対して使用されるのは初めてだと見解を出しています。
日本国内に目を向けると裏金疑惑などで岸田政権の支持率は低迷しています。岸田首相も何かしらの成果を挙げることで支持率を上げたいと考えるでしょうから、北朝鮮にとっては近づく好機となります。
実際に、岸田氏は昨年11月に行われた拉致被害者の集会で「日朝首脳会談を実現したい」と発言しています。いまだ実現に至っていませんが、内閣情報調査室や警察庁が真剣にシナリオを考えていたようです。
岸田首相の思惑としては、拉致問題で成果を上げることに加えて、トランプ氏がアメリカ次期大統領になったときの“お土産”にしたいのではないでしょうか。現在、各国の政府や情報機関はトランプ大統領の再選を想定して、動き始めています。
岸田首相も「金正恩と会ってきました」と土産話を持っていけば、大統領選に勝利した直後のトランプ氏にコンタクトを取りやすくなります。アメリカと北朝鮮との繋ぎ役を買って出ることで、自らの存在感を高めるところまで視野に入れているのかもしれません。
韓国の情報機関は非常に敏感に反応しています。日本と北朝鮮が親密になることは韓国にとっては不都合。日米韓の連携が崩れることにもつながりかねません。北朝鮮が日本に接近する条件はこれまでになく整っていて、今回の選手団の来日は特使やスパイを遣わせるには、まさにドンピシャのタイミングなのです。
日本のスパイハンター
公安警察はどう対処する?
日本で行われるワールドカップの予選に際しては、私が所属していた公安警察も動きます。北朝鮮から信書が手渡されること自体は、外交の話なので公安が関与することはないと思われますが、それとは別に諜報員も送り込まれる可能性がかなり高い。公安はそちらのスパイのほうを監視することになります。