【W杯予選】「北朝鮮のスパイ」が選手にまぎれて入国、“国運をかけた任務”とは?Photo:JIJI

北朝鮮から日本に来るのはサッカー選手だけではない。3月21日、日本代表は北朝鮮代表とワールド・カップの予選を戦う。しかし、北朝鮮選手団の中にはスパイが“ほぼ確実”に紛れている。そう指摘するのは元公安の勝丸円覚さんだ。国際マッチで日本が盛り上がる間、 北のスパイは何を狙うのか。日本を守る公安警察はどう対応するのか。「絶対に負けられない場外戦」の全貌について、公安部外事課に所属した経歴を持つ勝丸円覚氏に語ってもらった。(構成/ダイヤモンド・ライフ編集部)

北朝鮮がスパイを
送り込む必然

 2月15日に北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記の妹である金与正(キムヨジョン)氏の談話が発表されました。この中で、条件付きではありますが、与正氏は「岸田首相の訪朝がありうる」と明言しています。これは、以前から日朝会談の実現に意欲を示す岸田首相に対するメッセージです。

 3月21日に日本で行われるワールドカップの予選に際して、北朝鮮からのメッセージを持った特使が送り込まれることは必然だと考えています。その理由を説明していきます。

 まず前提として、スポーツや文化事業などで大きな派遣団が動くとき、その中に情報機関のスパイが紛れ込んでいることは、インテリジェンスの世界では常識です。

 実は、日本政府は頻繁に使わない手段なのですが、特別に警察庁の人間が他の中央省庁の官僚のふりをして同行こともあります。北朝鮮や中国といった国は当然のように、情報機関員や党幹部を送り込みます。

 先日も中国・杭州でアジア大会がありましたね。開催国の中国は北朝鮮にとっては友好国なので、情報機関の人間や朝鮮労働党幹部も派遣団の中にいて、中国にいる北朝鮮のスパイと情報交換したり、中国で集めた現金を持ち帰ったりしていたようです。

 今回のワールドカップ予選において注目しているのは、金総書記から岸田首相への信書が持ち込まれるかどうかという点です。

「北朝鮮とは様々なルートを通じて働きかけを絶えず行っている」と日本政府の関係者は度々口にしていますが、私は北朝鮮と日本との間のコミュニケーションはかなり冷え込んでいると見ています。

 なぜならバイデン大統領がこれまで北朝鮮を放置してきたからです。トランプ前大統領は在任中に3回も米朝首脳会談を実施しましたが、バイデン大統領になってから北朝鮮を担当する専任の補佐官がポストごとなくなっています。要するに、北朝鮮問題に取り組む気がない。日本はアメリカに倣う国なので、個人的に太いパイプを持ってるような人も日本にはいなくなっているのではないかと推測できます。小泉元首相が電撃訪朝された際に活躍された元外務審議官の田中均さんのような人はもういないと見ています。

 北朝鮮の周辺国に目を配ると、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は親米派です。日本に対して拉致問題の解決をちらつかせて友好的な関係を築いておきたいという北朝鮮の算段があっても不思議ではありません。

 こうした要素を考慮すると、サッカーの北朝鮮代表団が来日するタイミングで金正恩氏の信書が持ち込まれる可能性は非常に高いです。