公安がまず何をするかというと、北朝鮮選手団のパスポートやビザの情報を見てます。選手やコーチだけでなく帯同する全員分です。そこで監視すべき対象は誰かを選定します。

 次に選手団が来日する現場に行って、動画を撮ります。マスコミが張る到着ロビーでも必ずどこかで見ていて、顔を秘匿撮影して特定する「面割り」の作業を行います。誰が来て誰が来なかったのかを把握し、来た人の顔と名前を一致させることが目的です。

 相手もプロでこちらが顔を撮影しようとすることを知っていますから、選手団と一緒に出てこない可能性もあります。別ルートから出ようとしたり、そもそも別日を設定し、ビジネス目的と称して入国しようとしたり、別の空港を使ったりしてなるべく顔を出さないように入国しようとしてきます。公安はあらゆる情報を入手して、撮り逃さないように待ち構えているはずです。

 このようなとき空港が協力してくれることもありますが、空港の混み具合とかセキュリティの関係で協力を断られることもあります。公安警察としては普段からそういうわがままが効くように空港内に協力者をつくっておかなければならないのです。こうしたケースは数年に1回あるかないか。こうしたときに協力してもらえる関係を作っていくのは難しいですが、公安の重要な仕事の一つです。

 北朝鮮のスパイだとわかった人物がいれば、24時間監視することになります。監視のポイントとしては、「どんな目的を持っているのか」と「誰に会うのか」。向こうがどんな情報を狙っているのかを把握することが求められます。

弱みを狙われる岸田首相
日本の対北朝鮮外交が危ない!

 3月26日には逆に日本代表チームが、北朝鮮の平壌で試合をします。今度は日本から北朝鮮に対して、信書という形かどうかは別として、何らかのメッセージが送られるはずです。この親書を送った後は連絡ルートができるので、岸田首相の訪朝を実現するための綿密な交渉ができるようになるでしょう。

 冒頭で触れた2月15日に発表された金与正氏の演説を聞くと、日本が到底飲むことができない条件がついています。「拉致問題は解決済み」や「核・ミサイル開発は認めろ」という従来通りの主張は崩していません。ここをどう調整して訪朝を実現するか、非常に難しい舵取りを岸田政権は要求されています。

 18日朝には、北朝鮮から弾道ミサイル3発が発射されました。これは“強く”日本を意識しているわけではなく、米韓合同軍事演習や韓国で開催されている「民主主義サミット」にブリンケン米国務長官が出席していることに対抗したものだと思われます。ミサイルは日本のEEZの外側に落下していることもそれを示しています。

 しかし、北朝鮮が日本を“まったく”意識していないわけではありません。先ほども述べたように、岸田政権の支持率低下につけ込んで北朝鮮は日本に接近してきています。北朝鮮にとって交渉を有利に進められると強気に出てくるはずです。ロシアとの軍事的関係が強くなっていることもその傾向に拍車をかけることが予想できます。支持率を挽回することに躍起になって、北朝鮮に足元を見られることだけは避けなければなりません。