美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。
美しき「フェルメール・ブルー」に秘められた黄金の価値
この絵は別名「青いターバンの少女」と呼ばれているのをご存じですか?
──聞いたことがあります! 確かにどちらかというと真珠の耳飾りより青いターバンの方が目につきますよね。
そうですね。このターバンは当時のオランダの一般的な衣装ではなく、おそらくトルコのあたりのファッションが影響していると言われています。
──トルコ? なんでまたそんな遠くの国なんですか。何か関係があったんでしたっけ?
その頃トルコはオスマン帝国という名前で、しばしばヨーロッパを脅かす存在でした。しかし、それと同時にヨーロッパとは完全に異なる文化を持ち、異国情緒に溢れる彼らは、ある種の憧れの対象にもなっていたんです。
──えー! そんなことが…。「嫌よ嫌よも好きのうち」ってやつですかね?
うーん、そうなような違うような…(汗)。そして、このターバンの青色が素晴らしいんですが、この青色にはなんと…宝石の粉が使用されているんですよ!
──宝石の粉!! そ、そんなことがあっていいんですか!?
すごいでしょ? この青はその当時アフガニスタンでしか産出されていなかったラピスラズリという宝石から作られています。ラピスラズリを鉄の棒で砕き、それをふるいにかけ、細かい粒子にしたものを油と混ぜて絵具にする…。これがウルトラマリン・ブルーと呼ばれる絵具になったのです。
──ウルトラマリン・ブルー…。名前までかっこいいですね!
そうですね、「海を越えて渡ってきた青」という意味です。青色の元になる石は他にもあったんですが、こんなに美しい青色になるものはなかったんですね。
──お~。なんかロマンを感じる! でも…お高いんでしょう?
テレビショッピング? (笑) それがそうでもないんです!! …と言いたいところですが、おっしゃる通りめちゃめちゃ高いです。なんといっても当時は黄金にも匹敵するほどの値段だったというんですからね。
──金と一緒の値段!! そんな高価な絵具をこんなに使えたなんて、そんな…。
フェルメールにはパトロンがいましたからね!
──なるほど! すごい、いろいろ繋がっていきますね!
それも面白いでしょ? ぜひ、この美しい「フェルメール・ブルー」とも呼ばれる青に注目してみてくださいね!
──はい! ロマンを持って見ます!
(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)