福井県池田町役場では職員同士が結婚した場合、夫婦どちらかに退職を求める内規がある。このほど、町議会で内規の撤廃を求める意見が出たが、町が継続する姿勢を示したことが物議を醸している。そもそも、結婚などを理由にした退職勧奨に法的問題はないのだろうか。
池田町の場合、「夫婦どちらかに退職を求める」との内規だが、歴史を見れば女性側に圧力がかかる可能性が高いのではないだろうか。女性が採用時に「結婚したら退職」との念書を書かされたり、妊娠や結婚、出産を理由に退職勧奨を受けたりしたケースは少なくない。特に昭和の時代には公務員でも民間企業でも横行していた。
産業が少ない村に若い人を残すため
結婚退職を前提に、女性はまったく役職に就けない仕組みの会社もあった。
1960年代には、ある大手企業に採用された際、「結婚したら退職」との念書を書かされた女性社員が実際に結婚後に解雇を通告され、訴訟を起こした。一審判決では女性が勝訴。会社側は控訴したが、その後、和解が成立した。
ただ、過疎にあえぐ小さな自治体に住む人々には、「役場で働くことが憧れ」「数少ない就職先」といった事情もあるようで、過去の新聞記事には「産業が少なく、若い人を村に残すため、慣習的に(結婚退職を)お願いしてきた」との自治体側のコメントが掲載されている。夫婦での役場勤めを厳しい目で見る住民もいたようだ。
かつては「寿退社」などという言葉も存在したが、時代は令和である。池田町に限らないが、夫婦のどちらかに退職を求めるという内規に法的な問題はないのだろうか。
企業のコンプライアンスに詳しい村松由紀子弁護士によると、女性を守る法律は整備されている。
1986年に施行された男女雇用期間均等法の9条では、
「事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、または出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない」
「事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない」
と定められている。「予定する定め」とは、念書のようなものだ。