Photo by Masato Kato
グーグル、アマゾン、マイクロソフトといった米巨大テック企業や米オープンAIが、AI(人工知能)への巨額投資を加速させている。この空前の資本投下の波の中で、日本企業にチャンスはあるのか。特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#12では、日本を代表するAIスタートアップ、プリファード・ネットワークスの岡野原大輔社長を直撃。広がる「AIバブル論」の本質とともに、日本企業が活路を見いだせる「フィジカルAI」の勝ち筋について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二)
米ビッグテックの巨額投資はバブルか?
「すでにAIは回収フェーズに入った」
――米中がAI覇権を争う中で、岡野原さんは以前から「国産AI」の必要性を訴えてきました。足元では、AIへの巨額投資の規模が膨らんでいて、海外製のAIが席巻していますが、日本企業に勝機はあるのでしょうか。
AIを作るには半導体が不可欠です。現在は米エヌビディアのGPU(画像処理半導体)が主流ですが、最先端の大規模AIモデルを開発する企業の多くも、自前で半導体開発へとかじを切っています。
もう一つ不可欠なのが、巨大なデータセンターをいち早く立ち上げる能力です。3年、5年とかけていては間に合わない。グーグルやAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)などのハイパースケーラーは、米欧を中心にギガワット(GW)級のデータセンターを次々に立ち上げており、世界規模で拡大しています。
そして電力。米国でも中国でも、データセンター向けの電力が全く足りていません。遠隔地から大量の電力を届ける送配電技術が求められます。
こうした中で、われわれも「MN-Core」という半導体を作って、「PLaMo(プラモ)」というAIモデルを開発していますが、すでにAIは「作る」段階だけではなく、「使う」段階へ移行しています。具体的には、米オープンAIのChatGPT、米グーグルのGemini、米アンソロピックのClaudeといった生成AIは、企業や個人が猛烈な勢いで使い始めている。
国産AIを作ることはもちろん大事なのですが、すでに海外のAIが使われ始めていることを考えると、日本企業全体にとって最も確実かつ大規模な需要が見込めるのは、AIを動かすためのデータセンター関連と電力だとみています。
データセンターには、サーバーやネットワーク機器だけではなく、冷却設備、発電設備や送配電システム、さらには光ファイバーまで、幅広いインフラが不可欠です。とりわけ、光通信分野は日本企業の競争力が高い。
巨大データセンター投資の内訳を見ると、確かに半導体は大きく、全体の3割から4割を占めるといわれます。ただし、冷却設備や電力制御機器も約3割を占めており、決して小さくありません。
さらに発電分野では当面はガスタービンが主力ですが、将来的には小型原子炉の技術も必要になるでしょう。あとは遠くの発電所から電力を運ぶ送配電システムも投資の重要な柱で、その規模は半導体に匹敵するとみられます。
実際に、昨年あたりからデータセンターの立ち上げでは「半導体は確保できても電力が足りない」という問題が顕在化している。この需要に応えられる日本の重電・インフラ企業にとっては、大きな商機が到来しているといえると思います。
―― 一方で、米ビッグテック4社の投資額は100兆円を超えるともいわれていて、「AIバブル論」が強まっています。この投資は持続可能なのでしょうか。
確かに投資額は巨額です。しかし、AIサービスは爆発的に普及し、一部では巨大な市場が立ち上がっていて、投資の一部はすでに回収フェーズに入りつつある。少なくとも「AIは幻想だった」とはいえない事業の柱が立ったので、今後も投資を回収できる新たな収益源が高い確率で生まれてくるとみています。
巨額投資をする企業としても、AIが明確にビジネスとして成立し、収益を生み始めていることに確信を持ちつつあるのではないでしょうか。
――すでに収益化しているAIの巨大市場とは、具体的にどの分野を指しているのですか?
2014年創業のプリファードは、トヨタ自動車、ファナック、日立製作所などの出資を受けて、半導体開発、クラウドサービス、AIモデル開発など、AI事業を次々に立ち上げてきた。「AI」と「産業」を結び付けてきた岡野原社長は、次なる商機をどこに見いだしているのか。次ページでは、米ビッグテックの巨額投資の裏側で「確実に収益を生み出している巨大AIビジネス」の正体を明らかにし、日本企業が挑む「フィジカルAI」の勝ち筋に迫る。







