マイケル・ジョーダンもハマった!
スポーツ賭博の依存性

 今回のニュースをスクープしたのは、ESPNのワシントンD.C.在住の記者、Tisha Thompson氏だ。「連邦捜査の対象となっている違法な賭け屋(英語ではbookmakerという)で賭けるために、大谷選手の多額の資金を盗んだ」と報じた。

 記事によると水原氏は、サッカー(International Soccer)、バスケットボール(NBA)、フットボール(NFLやCollege football)などのスポーツ賭博で多額の借金を抱えていた。そして水原氏は自ら、借金の返済を大谷選手に依頼したことがあるとも明かした。しかしその一方で、水原氏は「翔平はスポーツ賭博に全く関与していなかったということを知ってほしい。この賭博が違法だとは知らなかった」とも話している。

 水原氏がESPNに語ったことによると、「2021年にサンディエゴのポーカーゲームで賭け屋のMathew Bowyer氏と知り合い、その年の後半から信用取引で同氏と賭け始めた。22年末までに損失は100万ドル以上に達し、そこから膨らんでいった」。

 明らかになったのは、「この賭け屋のBowyer氏の銀行口座へ、大谷選手の銀行口座から450万ドル(約6億8000万円)が送金されていた」ことだ。ちなみにBowyer氏は「大谷選手には会ったこともない」と話しているという。

 スポーツ賭博は米国の40近い州で合法となっているが、カリフォルニア州では依然として違法である。米政府によって規制されているスポーツ賭博の賭け屋は、ベッター(賭ける人)に賭け金の前払いを要求するが、違法な賭け屋はクレジット(借金)で賭けを受け付ける。

 22年には、元MLBのヤシエル・プイグ選手(13年にドジャースでデビュー)が違法なスポーツ賭博を繰り返し、違法賭博容疑で捜査を受けた際、虚偽の供述を行ったことで起訴された。プイグ選手の事件は現在、第9連邦巡回控訴裁判所で審理中だと報じられている。

 スポーツ賭博に夢中になってしまった有名スポーツ選手といえば、バスケットボールのマイケル・ジョーダン氏である。NBAで数々の記録を打ち立てた伝説のプレーヤーであるジョーダン氏だが、実は大のギャンブル好きとしても知られる。米国人も彼をクレージーだと思うほどのエピソードが幾つもあり、例えば、ゴルフのパット1つに30万ドルを賭けたことがあるという話は有名だ。

 水原氏に話を戻すと、17年から大谷選手の専属通訳として活躍し、23年のシーズンオフにエンジェルスからドジャースへ大谷選手とともに移籍した。3月20日まで、韓国のソウルで行われているドジャースの開幕シリーズに同行し、いつものように大谷選手の取材対応で通訳を務めていた。

「僕は賭けは下手なんだ。二度とやらない。一度も勝ったことがない。つまり、自分で穴を掘ってしまい、それがどんどん大きくなって、そこから抜け出すためにはもっと大きく賭けなければならなくなり、負け続けてしまった。雪だるま式に」と水原氏はESPNに語っている。残念ながら、ギャンブル依存症であることは明らかだ。

 しかし、これは米国の良い点であるが、失敗してもやり直すチャンス、風土がある。これを機に水原氏がスポーツ賭博から離れて、いつの日か大谷選手との友情が戻ることを筆者は願っている。