骨粗しょう症は骨密度が低くなる疾患。骨密度が低くなると、具体的にはどんな症状が引き起こされるのでしょうか。「骨粗しょう症は、高齢者に特有のもの」と思っている人が多いかもしれませんが、通常、50歳前後から骨密度は急激に低下していきます。そもそもどんな疾患なのか、予防法や最新の治療について、専門医に聞きました。(取材・文/日本文章表現協会代表理事 西田延弘)
ちょっとした尻もちでも
骨折してしまう危険がある
「骨粗しょう症は“骨強度の低下”を特徴とした、骨折の危険性が増大する疾患です。骨に含まれるカルシウムなどが減り、骨密度が低下し、骨がもろくなる病気です。本人も気づかないうちに背骨が骨折していたり、尻もちをついただけで手首の骨や大腿骨の近位部が骨折してしまったりするなど、わずかな衝撃で骨折してしまうことがある、怖い疾患です」
こう解説するのは、骨粗しょう症が専門の昭和大学横浜市北部病院准教授の大下優介先生。骨粗しょう症になると、体内にあるどの骨も骨密度が下がりますが、背骨の中にある「胸腰椎移行部」は、骨折が発生しやすい部位です。
背骨が骨折すると、骨癒合(骨同士がくっつくこと)するまでの間は腰痛のために体を動かすことが困難となり、入院生活を余儀なくされる人もいます。将来的に背中や腰が曲がってくる、身長が縮んでくるといった症状が現れることもあります。
「一般的に骨折部は癒合するのですが、骨がくっつかずに折れたままだと、慢性的なとう痛の原因となる人もいます」
また、背筋が丸くなったまま癒合すると、「長く立っている」「腰を曲げる」「座る」という行為によって腰が痛くなったり、立っている時のバランス保持が困難になったりします。