歩行困難や肺炎、ぼうこう炎……
骨折すると全身に影響する箇所とは

 大腿骨の周辺を骨折してしまうと歩行が困難になり、つえを使用したり車椅子に頼らなくてはならなくなったりする生活を余儀なくされる可能性もあります。この症状は高齢者に多く、肺炎やぼうこう炎などのさまざまな合併症も引き起こされます。全身に影響するので、近年は早期に手術が行われるようになってきているとのことです。

「バランスを崩して、手を突いた際に手首の骨が折れるといったケースもあります。ギプスでの治療のほか、徒手整復(皮膚の上から、ずれた骨を手によって正しい位置へ戻す治療法)をしても骨折部がずれる場合は、手術を行うこともあります」

50歳から急激にリスクが高まる「骨粗しょう症」の恐ろしい後遺症、たかが骨折と侮るな!大下優介 昭和大学横浜市北部病院整形外科准教授

 骨の中では、常に古い骨が吸収されて(骨吸収)新しい骨が作られています(骨形成)。このことによって骨には強度と弾力性が生まれ、骨折しにくい骨が形成されています。このバランスが崩れて骨吸収量が骨形成量を上回ると、骨の量が減少してもろくなってしまいます。

 骨密度は20歳前後がピークとなり、その後30代、40代ではほぼ変わらず、多くの人では50歳前後から急激に低下します。女性は骨吸収を抑える作用のある女性ホルモン・エストロゲンの分泌量が閉経によって減るので、男性に比べて減る量が顕著です。

「若い方でも、極端なダイエットや運動不足、ステロイド剤(骨をもろくしてしまう作用がある)の服用などの影響によって、骨粗しょう症になることもあります。また、アルコールやカフェインも骨粗しょう症に影響する可能性があります」

 ただし、これは相当量のアルコールやカフェインの摂取によるものなので、過度に摂取しない限り心配はありません。日照不足なども原因となることがありますが、骨の石灰化を促進するビタミンDを体内で生成するには日光が必要なためです。