韓国半導体大手のサムスン電子は人工知能(AI)を巡る競争で後れを取った――少なくともレースの1周目では。だが、サムスンを見限るのは賢明ではないといえる。AI向け高性能半導体メモリーの分野では最近、同じ半導体大手である韓国のSKハイニックスや米マイクロン・テクノロジーとの技術的な差を縮めつつあるようだ。ライバルに追いつくのに予想より時間がかかるとしても、AIブームに伴う半導体メモリー市場全体の需給逼迫(ひっぱく)がサムスンにとって大きな追い風となる可能性がある。チャットボット(自動会話プログラム)の「チャットGPT」といった、生成AIを活用した技術が登場して以来、米半導体大手エヌビディアのAIチップは飛ぶように売れている。半導体メモリーのメーカーによるエヌビディアなどへの高性能製品の供給は追いつかない状態だ。AIに不可欠な高性能製品の一つ、「高帯域幅メモリー(HBM)」はデータ処理速度を向上させることができる。