「入国時のリスクは確かにあります。もし捕まったら、その国では出稼ぎを諦めるしかないですね。でも、入国さえしてしまえば、個人レベルでの動きが検挙されることって、まずないと思う。エージェントを通すと組織犯罪になるので、検挙のリスクも高まると思いますが、今のやり方を通している以上は、入国審査さえクリアすれば基本的には何とかなると思っています」

 マリエさんが大きな影響を受けた女性もそうであったように、性風俗のさまざまなジャンルにおいて、同業者向けに自分の知識や技術を売る動きが、ここ数年でより活発になってきている。マリエさんは7~8年前と早い段階から、国内外で特定の性的なサービスに伴う技術を教える講師としても活動してきた。

 マリエさんのSNSなどで紹介される技術に興味を持った同業者らから、「技術を教えてほしい」と問い合わせが入ることもある。ツアーで訪れる都市で場所を借り、同業者向けにクラスを開催したり、個別指導を行ったりもしている。

 最近は、欧米の都市で1人1日500ドル、生徒数12人のクラスを3日間持ち、日本円で261万円程度の収入を得た。日本でも同様のレッスンを行っており、初回は10万円、2回目以降のレッスンは2万円としている。これまでにレッスンを受けにきた日本人は15人ほどで、海外でのレッスン参加者のほうが多い。

 講師活動は、人に教えられるほど技術力が高いという点で自身のマーケティングにも有効で、かつ同業者のネットワークを広げることにも一役買っている。

「私は『今、これをやったほうがいい』という動物的な勘が鋭いほうだと思う。講師として活動することも、性風俗の仕事をするうえで大きなメリットをもたらすと思って動いてきました。方向性や感覚が合えば、こうして出会った同業者と一緒に、客へのサービスをすることもあります。お互いの客を広げることにもつながるし、知見を深める機会にもなる。単身で活動するうえで、同業者のネットワークがセーフティネットとして機能することもあるから、横のつながりはとても大切なものです」

アメリカの富豪老人と同居
報酬はひと月145万円

 現在、各国に40人ほどの固定客がいるマリエさんだが、長い客は10年ほどの付き合いになる。関係が長くなるほどに、作り込んだ姿ではない、素の部分がどうしても出てくる。