のと鉄道、のと里山里海号の強みは
「地域の魅力訴求+収益化」の両立
のと鉄道、のと里山里海号の強みは何だろうか? 一言でいうと、「鉄道ファンだけでなく、一般的な観光客にもウケる意識を持っている」ことだ。中田社長をはじめ関係者は、幅広い客層に響き、しっかり単価をとれる観光列車を作ることに心血を注いできた。
民間で観光業を営む人からすると「何を当たり前のことを!」と言いたくなるかもしれないが、一般的に役所関連からの出向者も多い第3セクター鉄道では、この意識を持つことすら当たり前ではない。楽しませる要素が少なく、役所の実績作りのようなモノになってしまうケースもある。
一方で、のと鉄道は地域のセールスポイントを常にリサーチし、旅行会社に向けた定期的なツアーを開催して意見を募り、のと里山里海号のブラッシュアップを続けている。同社は、「地域の魅力訴求+収益が取れる観光コンテンツ作り」を両立させているからこそ、JTBやクラブツーリズムといった大手旅行会社のツアーで支持を得ているのだろう。
地道な取り組みの成果は利用実績に表れており、コロナ禍前の2019年度の数字で見ると、のと里山里海号の利用者は年間約1.5万人、そのうち3分の2をツアー・団体客が占めたという。中田社長によると、のと里山里海号は、隣接地域の観光列車である「花嫁のれん」(JR七尾線)、「べるもんた」(JR氷見線)、「一万三千尺物語」(あいの風とやま鉄道)などと組み合わせたツアーで人気を博しているそうだ。
しかし前述の通り、のと里山里海号の再開は容易でない。新しく誕生するかもしれない震災学習列車が魅力的なコンテンツに成長するまで、のと鉄道および中田社長の試行錯誤は続くだろう。