輪島朝市は観光スポットとして年間80万人以上の人々が訪れ、近年では外国人観光客(インバウンド)も増加していた。市場の再興を願いつつ、その魅力と歴史を探りたい。なぜ「日本三大朝市」と称されるほどのにぎやかな朝市が立つようになったのだろうか。(乗り物ライター 宮武和多哉)
地震と火災に見舞われた「輪島朝市」
年間80万人以上が訪れていた
能登半島地震の影響で、石川県輪島市の市街地で大規模な火災が発生した。「輪島朝市」が開催される河井町の一帯、約5万平方メートルが焼失し、約300棟の家屋が被害を受けた。
輪島朝市は、神社の祭礼日に行われていた物々交換から始まったといわれ、平安時代の初期から1200年以上の歴史を持つ。朝市に並ぶのは、目の前の日本海で獲れる新鮮な魚介類や、一夜干しなどの加工品、背後の険しい山で育まれた米や野菜、そして伝統工芸「輪島塗」の椀(わん)や塗り箸、手工芸品などなど――。生鮮品と日用品・工芸品の店が一本の通りに軒を連ねるのが特徴であり、他の朝市にはない多種多様さが魅力だ。
筆者は、旅行や取材で何度も輪島朝市を訪れたことがある。全長350m、約100店舗の通りを歩くと、色とりどりの魚やおいしそうな匂いに引かれ、「安くしとく!」「こぅてくだぁ!(方言で「買ってください」の意)」の掛け声が飛び交う活気につられて、つい財布のひもが緩んでしまう。
輪島朝市は能登半島随一の観光スポットとして年間80万人以上(2015年・輪島市調べ)の人々が訪れ、近年では外国人観光客(インバウンド)も増加していたという。
甚大な被害により、1月26日時点では、再開のめどは立っていない。市場の再興を願いつつ、その魅力と歴史を探りたい。決して便利とはいえない能登半島の北側、周囲を山に囲まれた輪島で、なぜ「日本三大朝市」と称されるほどのにぎやかな朝市が立つようになったのだろうか。