「能登地震は人工地震」というデマはなぜ生まれる?意外に根深い日本人との因縁写真はイメージです Photo:y-studio/gettyimages

「人工地震だ!」と騒ぐ人たちにどう接するか

「能登町に謎の爆発音がして、そのニュース記事が削除された翌日に巨大地震がきた。土地を強奪するための地震兵器というのは明らかなのに、なぜ日本人は危機感を抱かない?」
「異常な多さの余震や地震波形を見れば、人工地震の可能性もあるのに頭ごなしに否定する日本人は、自分の頭で考えない羊たちの群れだ」

 令和6年能登半島地震を「人工地震」だとSNSでふれまわる人々が注目を集めている。

 そのような主張に対して、NHKをはじめメディア各社は、専門家による「一般的な地震」「今回の規模は核実験でも起こせない」という解説とともに、「偽情報」と注意喚起をしている。しかし、「マスゴミが必死で火消しをしていることが、人工地震である証拠だ!」なんて感じで、人工地震派の皆さんが逆に“確証を得る”というなんとも皮肉な事態が起きている。

「攻撃を受けた」という根拠とされている能登町の変電所の爆発音に関しても、日本ファクトチェックセンターが、記事を配信した北陸放送と北陸電力に取材したところ、そのような事実がないことが判明しているが、人工地震派の皆さんはスルー。それどころか、国立研究開発法人・海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が23年8月に震源近くで作業をしていたことが、地震の原因だという「新説」まで唱えられている。

 さらにSNSでは「異なる考えの人」同士の「対立」も始まっている。

 人工地震否定派の人たちの「陰謀論」という批判に対して、「人工地震じゃないとは言い切れないだろ。人工地震じゃないという証拠を出せ」という、いわゆる「悪魔の証明」的な反論が行われ、「ワクチン陰謀論と同じ」「中学の物理からやり直せ」など激しい悪口の応酬が始まっているのだ。

 さて、こういう話を聞くと、「なぜ荒唐無稽な陰謀論にハマってしまうのか」「こういうデマをまき散らすことをどうすればやめさせられるのだろう」と憤る人も多いだろう。

 ただ、人工地震派の皆さんをかばうわけではないが、こういう考えに取りつかれてしまうのも致し方ない部分もある。巨大地震が起きた時に「人工地震」だと捉えて、「敵からの攻撃」だと身構えるような風潮は昨日今日出来上がったものではない。実は100年以上前から続く民間信仰のようなものだからだ。