この疑問を「イノベーション」と「マーケティング」、ふたつの視点から解説したいと思います。
視点1
チルドカップにまつわるイノベーションの話
スターバックスコーヒーの創業者であるハワード・シュルツという経営者は面白い方で、欧州スタイルのコーヒー文化を世界に広めるという強い哲学にこだわる一方で、新しいものにチャレンジをするイノベーター気質の強い人でもありました。
その相反する気質として私が一番面白いと思っているのが「マザグラン」という失敗商品です。これは90年代にスタバがペプシコと共同開発して失敗に終わった炭酸コーヒーです。
常識で考えたらスーパーの食品棚でペプシコーラの横に置かれている炭酸コーヒーという商品は、ひょっとしたら売れるかもしれませんが(ここまでは私も譲歩できます)、欧州スタイルのコーヒー文化を世界に広めることに関しては足を引っ張りそうです。
ちなみに当時のアメリカはまだアイスコーヒーが人気になる前のことだったそうです。現在の日本のように気軽にオーダーできるような雰囲気ではなかったわけです。
伝統にこだわるハワード・シュルツが、伝統を破壊することにも高い関心を持っているという点で、彼という人物に興味をそそられるひとつのエピソードだと思います。
実は、チルドカップの話はその前日譚ともいえるエピソードから始まります。