そして、2023年放映開始の『ひろがるスカイ!プリキュア』は、「ヒーロー」がテーマに選ばれ、主人公は異世界出身で変身衣装がこれまでピンクが主体であったのをブルーに、そして12歳の少年と18歳の成人女性もプリキュアになるという新機軸が打ち出された。
制作のABCアニメーションの田中昂プロデューサーは、この「ヒーロー」というテーマを「変身ヒロイン」とは別のものとして捉えている。
曰く「プリキュアシリーズは「変身ヒロイン」という言葉で表現されることもありますが、今回、私たちはあえて「ヒーロー」をテーマに選びました。『ふたりはプリキュア』からスタートしたプリキュアシリーズも20作目。多様に進化しながら、広がっていくプリキュアの歴史の中で変わらずに描き続けてきたこと、それは困難な道を自らの手で切り開き、先頭に立ってみんなを勇気づけてきた彼女たちの姿です。その姿を「ヒロイン」から「ヒーロー」として改めて捉え直したい、そういう思いでこのテーマを選びました」ということである。
つまり、ここで言う「ヒーロー」とは必ずしも男性のことではなく、「ヒロイン」とは違ってジェンダー・ニュートラルな概念なのであろうと推測される。
おなじみの悪の勢力は
旧来的な会社組織のよう
「プリキュア」は、善と悪の問題についての悩みというものが少ない、というよりほぼ皆無のシリーズである。
「プリキュア」の悪役たちは、シリーズによってさまざまなバリエーションがありつつも、「世界征服」に類するおなじみの野望を持った領袖がおり、その手先によってこの世界の何らかの物体がモンスター化し、悪感情と暴力をふりまき、それとプリキュアが戦うという構図を基本としている。
例えば『ふたりはプリキュア』では悪の勢力ドツクゾーンとその領袖ジャアクキングが、「光の園」という異世界から7つのプリズムストーンを奪うことで、永遠の存在となろうとしている。プリキュアたちはそれと戦うのである。
このように分かりやすい善悪の構図を基本とする「プリキュア」であるが、悪の勢力の描かれ方には1つ興味深い特徴がある。それは、悪の組織がある種の旧来的な会社組織のように描かれるということである。