新社会人にとって最重要なスキルをひとつだけ挙げるならそれは「言語化力」である――。文章や話し方の専門家であり、話題の書籍『「うまく言葉にできない」がなくなる言語化大全』の著者でもある山口拓朗氏はそう指摘します。「とっさの質問にうまく答えられない」「『で、結局、何が言いたいの?』と言われる」人は言語化力が欠けているのです。本稿では、著者・山口氏が同書のエッセンスを盛り込みながら、新社会人の方に向けて、言語化の重要性や言語化がうまくなるコツなどをお伝えします。
「言語化力」が低いとメンタルをやられやすい?
入社間もない新社会人に求められるのは、ストレスを上手に管理するスキルです。新しい環境や人間関係に直面する中で、このスキルが低いと、精神的な負荷に耐えられなくなることもあります。実は、このストレス管理の鍵を握るのが、意外にも「言語化力」なのです。
たとえば、新社会人が仕事を始めて1か月が経ち、何かが「ツラい」と感じ始めたとしましょう。
この「ツラさ」が、その後、少しずつ増していくとしたら、それは、強いダメージを受けている証拠です。しかし、「ツラい」と感じた人全員が、同じように強いダメージを受けるわけではありません。なかには、すばやく「ツラさ」を解消できる人もいます。
両者の違いこそが、言語化力の差です。
ツラさの原因を言葉にできない人は、ただ「ツラい、ツラい」とくり返すだけ。ツラさが積み重なっていき、出口の見えないトンネルに迷い込んでいきます。
一方で、さほどダメージを受けない人は、「ツラい」という感覚を放置しません。彼らは何がツラいのか、その原因を具体的に考え、そして、言葉にしていきます。
以下は、ツラさの原因を具体的に言葉にした例です。
・毎朝、早く起きること
・満員電車で通勤すること
・上司から小言を言われること
・仕事が捗らず、残業が多いこと
・学生時代のように遊べないこと
・思っていた仕事と違ったこと
このように「ツラさ」の正体(=原因)を言語化することで、解決策が見つけやすくなります。
たとえば、睡眠不足がツラいなら睡眠時間を増やす、残業がツラいなら仕事の効率を上げる方法を考える、上司の小言がツラいなら小言を言われないためにどうすればいいかを考える――のにように、最適な解決策を導き出すことができます。
「ツラい」と思っているだけでは、いつまで経っても問題は解決しません。「ツラい」という感情がわいた際、その原因を言語化できれば、同時に、それらの原因を取り除く解決策も見えてきます。
メンタルをやられがちな社会人1年目こそ、言語化力を高め、上手にストレスを管理していきましょう。
*本記事は、「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」著者の山口拓朗氏が、本書のエッセンスを盛り込みながら新社会人向けに書き下ろしたものです。