糖尿病患者の「死因」が治療の進化で変化、平均寿命の改善も続くPhoto:PIXTA

 糖尿病(DM)の患者さんは、一般に心筋梗塞などを発症しやすく、平均寿命が短いとされる。このため加入できる生命保険が限られ、住宅ローンが組めないなどの制約も多い。

 しかし近年の治療の進化で、死因が変化し、平均寿命も一般人のそれに近づいてきた。

 日本糖尿病学会では1971年から10年ごとに日本人DM症例の死因と死亡時の平均年齢を調査している。

 昨年公開された5回目の調査は、協力施設の死亡症例からDM症例と非DM症例に関し、2011~20年のデータを比較。208施設、23万3176症例(DM6万8555症例)が解析された。

 それによると、DM症例の死因の第1位は悪性新生物(がん)38.9%、次いで肺炎などの感染症17.0%、第3位は心筋梗塞などの血管障害で10.9%だった。

 この順番は非DM症例と全く同じだったが、DM症例は、非DM症例よりも有意にがんと感染症の比率が高く、意外にも血管障害の比率は有意に低かったのである。

 DM症例のがんの内訳は、肺がん7.8%、膵がん6.5%、肝臓がん4.1%だった。血管障害では脳血管疾患が5.2%、心筋梗塞など虚血性心疾患が3.5%、慢性腎不全は2.3%だった。

 年代別では、各年代でがんが第1位の死因であり、50代と60代で約半数を占めた。30~50代の若年層では膵がんの比率が高かった。

 40代、50代では死因の第2位が感染症から血管障害に逆転し、若年層は血糖値に加えて、血管障害のリスクである脂質異常症や高血圧を厳格に管理する必要を物語っている。

 交通事故死などのアクシデントを除いて平均死亡時年齢を比較すると、DM症例は75.2歳(男性74.2歳、女性77.1歳)、非DM症例は75.1歳(男性74.2歳、女性76.5歳)と両者の有意差は認められなかった。

 日本人一般とDM患者の平均寿命の比較でも、差はじわじわ縮まっている。今回の結果を踏まえると、DMを理由とした制限やスティグマは、速やかに改善されるべきだろう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)