2つの糖尿病治療薬が
ダイエットでがぜん注目される理由
「昨今、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬という2種類の糖尿病治療薬が爆発的に売れて在庫切れになっています。特にGLP-1受容体作動薬は、欧米でも肥満の患者さんをベースに沢山使われており、皆が確保に走った結果、世界中で枯渇している状況です」
困り顔で語るのは、国際医療福祉大学・内科(糖尿病、内分泌、高血圧)の坂本昌也教授だ。糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血糖値の高い病態が続く病気だが、怖いのは、万病のもとに例えられるほど、多くの合併症を引き起こすことだ。
とりわけ生命を脅かすとされる心不全・腎不全・心血疾患に対して、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬は、発症・進展に有効である事が報告されている。
「歴史的に、糖尿病の薬は血糖値を下げるのが一義的な目的でした。血糖値が高いと合併症のリスクが高まるからです。ただ、従来の薬は、血糖値を下げることはできても、心不全・腎不全・心血疾患などの予防は難しいとされていました」
そこに登場してきたのが、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬だった。GLP-1受容体作動薬は、膵臓からのインスリン分泌を促し、分泌されたインスリンによって血糖値を下げる。 SGLT2阻害薬は、糖尿病治療薬の一種で、腎臓でのブドウ糖再吸収を抑制することで、血糖値を下げる。
「この2種は、血糖値を下げ、かつ心不全、腎不全といった心血管の合併症を予防できる初の薬ということで評判になり、一気に需要が高まりました。そこに、体重も低下するという効果を伴うとことで大きな注目が集まり、美容・痩身・ダイエット目的の適応外使用の需要が増加し、GLP-1受容体作動薬が入手困難になっています」
結果、2023年4月、日本糖尿病学会は、「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」と題し、学会員に向けて発表(同様の見解は2020年7月にも発表されている)するに至り、以降も再三、警告を発してきた。しかし、GLP-1受容体作動薬の「オゼンピック」「トルリシティ」や、GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」が限定出荷となっている問題は、一向に出口が見えない。