ついに剥がれた化けの皮

　こうして、ルディーの偽造ワイン造りに拍車がかかっていきました。2006年には、ニューヨークでルディーのシングルオーナーコレクションが開催され、2日間で約2600万ドルという売上が記録されています。しかしこの頃から、彼のワインにはフェイクが多いという噂がよく聞こえてくるようになりました。実際、2007年にルディーがクリスティーズに出品しようとした1982年産のルパンは、偽造と判断されオークション2日前に取り下げられています。

　2008年には、ブルゴーニュの造り手であるドメーヌ・ポンソの「クロ・サン・ドニ」を、1945～71年産のヴァーティカルロットで出品しています。ヴァーティカルロットとは、同じワインをヴィンテージ違いでまとめて出品することであり、レアなポンソのヴァーティカル好きを狙った出品でした。

　しかし、この出品が彼の転落の始まりとなります。彼の出品に対して、ポンソの当時のオーナーであるローラン・ポンソ氏から、「1982年産が最初のヴィンテージであり、出品された45～71年産は存在しない」とクレームが入ったのです。

　さらにその直後、アメリカの大富豪ビル・コッチ氏が、オークションで購入したルディーによる出品の1947年産のペトリュス、1945年産のミュジニー、1934年産のロマネ・コンティの真贋に対して訴えを起こしました。

　そして、ついに2012年3月8日の朝、カリフォルニアの自宅でルディーは逮捕されました。FBIが踏み込んだルディーの自宅からは、所狭しと並べられた高級ワインの空瓶をはじめ、インドネシアで印刷したラベル、コルク、スタンプ、細かく記した取引記録などが見つかったようです。ルディーには10年の禁固刑が言い渡され、この全米を揺るがした偽造ワイン事件は幕を閉じました。

　ルディーのワインを偽造だと証言したのがワイン業界のシャーロック・ホームズとも言われる鑑定家モウリーン・ダウニー女史でした。彼女によると、ルディーは偽造ワインで約120億円もの大金を稼いだと言います。ちなみに、ルディーの起こしたこの偽造ワイン事件は、「Sour Grapes」というタイトルでイギリスで映画化もされています。