ディラン  僕の10歳の甥っ子は、地元のリトルリーグでプレーしているんだけど、彼の試合を見に行くと、子供たちがみんな大谷のシャツを着ている。みんな大谷みたいになりたいって言うんだ。

 その影響は、20年くらいは表れてこないかもしれない。でも、その子供たちが、憧れである大谷が14時間くらい寝ているなんてことを読んだら、僕もそうしなくちゃと思うかもしれない。そういうふうに、彼が持つ日本的な価値観みたいなものも、アメリカ人に紹介されていくかもしれない。それは僕にとって嬉しいこと。誇りにすら感じると思う。日本の方がずっといいと思っている部分もあるから。たとえば、算数の勉強の仕方とか、日本のやり方でやってくれないかと願っている。アメリカのやり方は、ほんとダメだから。

トモヤ  野茂英雄、イチロー、大谷といった日本人選手は、アメリカにどんな影響を与えたと思う?

書影『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』
ディラン・ヘルナンデス 著、サム・ブラム 著、志村朋哉 聞き手・訳
定価924円
(朝日新書)

ディラン  野茂はとてつもない人気だった。野茂が来たのは、多分ピークを過ぎてからだったんじゃないかな。それでも数年間は、素晴らしい投球を見せてくれた。野茂が来る前は、日本はアメリカの選手が行ってプレーする場所だった。それが野茂が来て、「日本のプロ野球もレベルが高いんだな」と知ったと思う。

 イチローは、投手だけでなく、野手もメジャーで通用するんだと証明した。足も速かったから、日本人は技術だけじゃなくて運動能力もあるんだと思われるようになった。

 大谷の登場は、まさにその次の進化だった。アメリカ人よりも大きくて、パワーがあって、足も速い。身体的に上回っている。それを受け入れるのに、4、5年かかった。それまでの偏見を大きく覆すものだったから。人というのは、分かりやすいカテゴリーに分類したがる。大谷も野茂やイチローと同じように、アメリカ人が持つ日本人観を変えたんだ。

AERA dot.より転載