一昨年からA金融機関で、東京の私立大学の採用責任者を務めるS氏(入社19年目)との会話。彼とは、この連載が縁で知り合い、お話をうかがうことができた。

「『父と娘の就活日誌』に興味をお持ちいただきありがとうございます」

S氏「就活が、父と娘が語りあう機会になるなんてチャーミングですよ(笑)」

「Sさんが、入社の頃と比べると、新卒採用は変わりましたか?」

S氏「一番の違いは、リクルーターが人集めするやり方から、エントリーシート(ES)を提出する応募制に変わったことでしょう。それ以外は、10数年前と変わっていません」

「応募が多いので大変でしょう。選別にESは使うのですか?」

S氏「私の採用枠20名に対して、数百枚のESが来ます。ただ私のチームは、ESでは選別しません。面接に使うのが中心です」

「どのようにして対象者を絞り込むのですか?」

S氏「リクルーターの陣容は限界があるので、1対3の面接やグループでの面談を繰り返し、それを予選にして、SPI試験を実施してから個人面接に入ります。その時点で募集人員の数倍まで絞ります。その間2週間かかります。」

「採用責任者(ヘッド)は、いつから経験されていますか?」

S氏「今年で3年目です。リクルーターは新入職員時代からやっていましたが、ヘッドになると全然違います」

「何が違いますか?」

S氏「自分に最終権限が任せられているので、採用枠を“いい人材”で埋めたいと強くこだわりますね。所属からリクルーターをかき集めたり、彼らのモラル維持もやります。また内々定の後が本当の勝負ですしね」

「そうですね。内々定は5合目ですから(笑)。権限の反面、説明責任も負うでしょう。『何年入社の○○大学卒業生は、Sさんの責任』はついて回りますか?」

S氏「最近は若くて退職する人が多くなったので、『採用ミス』といわれるプレッシャーは、少なくなっています(笑)」

「時代の流れですね。Sさん自身の採用での目標は?」

S氏「いろいろなタイプの人材を採りたいですね。でもこれは楠木さんもお分かりのようにすごく難しいのです。どうしても自分の色や好みは出ますからね。」