「できるリーダー」は部下が未達だったとき、面と向かって何を言う?
そう語るのは、これまで4000社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/種岡 健)

「できるリーダー」は部下が未達だったとき、面と向かって何を言う?Photo: Adobe Stock

部下への評価をどう伝える?

 これは、ある会社の課長の話です。
 社会人2年目の部下が、伸び悩んでいました。
 アドバイスをしてやり方を改善しようとしても、あれこれと言い訳をされて、逃げられることが多かったそうです

「先週は全然ダメで、受注が取れませんでした。ほとんどのお客さんが、コロナの影響で業績が悪化していて、『いまは見送りたい』と言っています」

 このような、未達の報告が上がってきたときに、以前は次のように評価していたそうです。

「そうか。いまはコロナだから仕方ないな。次はもっと頑張れよ」

 これでは、何も改善されません。
 そこで、部下の報告をちゃんと聞きつつ、その中から「事実」だけを拾うようにしたのです

「『ほとんど』と言ったけれど、それは何件中の何件の人が言っていますか?」

 そうやって事実を確認してみると、お客さん全員が、コロナを理由にしているわけではないことに気づきました。
 淡々と事実を拾っていくと、部下は次第に自分の責任を自覚していきました
 そうして、指摘した点に対して改善行動が見られるようになっていったそうです。

 このように、言い訳に逃げて現状を変えようとしない部下には、ちゃんと詰めていく必要があります。
「詰める」と言うと誤解されてしまいますが、あくまで淡々と事実を確認していくだけです
「ダメじゃないか」「何やっているんだ」とキツく追い詰めるわけではありません。

「テンション」を保っているか

 もう1つ、例を紹介しましょう。

 ある製造業の課長の話です。
 部下は社会人4年目の若手でした。

 4年目になっても遅刻が多く、なかなか仕事に身が入らないようで、率先して学ぶこともなかったようです。
 その課長は、たまにしか遅刻について指導していませんでした。

 何度も言うと、「うるさい」と思われてしまって辞めるんじゃないかと心配だったからです
 そして毎日、やることを指示して、どれだけやったかは常に現場で見て確認するだけでした。

 すると、どうなったでしょう。
 遅刻については、指摘された直後の1週間くらいは時間通りに来るものの、翌週からはまた遅刻が続く。
 仕事についても、課長が見ているときは頑張り、いなくなったら手を抜くようになったのです。
 つまり、「言われたときだけ頑張ればいい」という態度だったのです

 そこで、私たちの考え方を導入し、やり方を変えるようにしました。

 遅刻は「姿勢のルール」なので、どう思われようと、遅刻したときは必ず指摘する
 日々の業務は、日報と直接の報告をさせるようにする

 それらを徹底しました。
 初めは、報告するときも「言い訳」が多かったようです。
 しかし、できなかった理由を考えさせ、次からはどうするかを毎回チェックすることで、次第に行動に変化が見られるようになりました
 いまでは、昔とは別人のようで、遅刻することもなくなり、戦力となってくれているそうです。

 ここから学べるのは、「たまに思い出したかのように詰めるだけでは意味がない」ということです。
 言うときと言わないときとでムラがあると、言われたときだけ頑張ろうとします。

 常に一定のテンションを保つことが、リーダーには求められます
 そうしないと、「機嫌がいいときはゆるく、機嫌が悪いときは口うるさい」などと思われてしまうでしょう。

 未達のときも、仮面をかぶり、毅然とした態度で「理由を問うこと」をやめてはいけません。

(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年4月現在、約4000社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』のシリーズ(いずれもダイヤモンド社)がある。