不利になる地方大学生の就活
教育格差を象徴するESのトレンド

 一方、地方の大学で就活指導をしていた私は、ますます地方大学が就活で不利になってきたと実感します。まず地方大学は、公務員か教員への就職を志向するのが一般的です。地方の場合、この2つの職業が圧倒的に安定していて、収入も高いからです。

 そのため、就活に力を入れていない学校が多く、公務員試験や教員採用試験の指導に慣れてはいますが、自らの就活経験がない教員が多いのです。また民間から転向した教員もそう多くはありません。

 つまり、採用側が何を考えてESや面接をやらせているのか、大学自体がわかっていないのです。私の場合、地方の、しかも女子大に勤務していました。地方の女子大はお嬢様学校が多く、いわゆる「女学校志向」がまだ残っています。男女雇用機会均等法が施行される前は、4年制大学卒業の女性は公務員か教師しか受け皿がありませんでした。また、教師か公務員を目指さないのなら腰掛け程度の一般職を狙うのが普通でした。つまり、寿退社を目的とする学生が多数いたのです。

 しかし、時代は変わりました。一般職の事務なら派遣社員で済むので、女子大卒の採用枠は昔と違ってどんどん減っています。ところが不思議なことに、地方大学の就職率はおおむね100%に近いほどの高就職率です。これにはカラクリがあります。バイトで働き始めても就職したとカウントし、就職活動に不熱心で家事手伝いになりそうな学生は就職希望者にカウントしないなど、全体の分母を減らして分子を増やすといった数字の操作をする大学が多いのです。そうすると、たいてい就職率が早稲田大や慶應大より高いという結果になります。

 そういった大学の就職支援体制の不備、あるいは無知に加えて、ウェブ面接が増えています。都会では就活生が友人同士でカメラスタジオを借り、ライティングまで考えてウェブ面接を受けているそうですが、地方では自宅に戻って自室からウェブ面接を受けざるを得ず、どうしても見劣りがします。プラス面はといえば、オンライン説明会やオンラインでのインターンが増えたので、交通費や時間を使わず色々な企業のイベント参加が可能になったことくらいでしょうか。

 大都市圏の大学では1年生からインターンシップの指導などがされていて、就職の情報を先輩や家族、同僚から詳しく聞けますし、OB・OG訪問も活発に行われています。しかし、地方の大学は、就活する学生そのものが少なく、OB・OGも少ないため、先輩に情報を聞くこともできません。都市部と地方の就活には大きな情報格差があると思います。

 このような差が、進学する大学の差にまで現れています。国立の旧7帝大に合格した東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の高校出身者が、2008~23年度の15年間で1.68倍に急増しているのです。一方地方の子は、都会の国立大で安い学費で勉強する機会も奪われ、良い会社に就職するチャンスも奪われつつあります。

 地方と都市圏の教育格差も、今後重要なテーマとして考えるべきだと思います。